誰が、独創性を追求できるか?

昨日のコメント、質問にお答えします。
Slaさん
最近はBは若い人がおおいみたいですよ。お勧めは、前菜(エスカルゴ、フォワグラなど。冷たいものより温めた方が楽しめるかも)、メイン(珍しい肉系、しか、ハト、ウサギ、うずらなど、もしくは無難に子羊など)、ワインはハウスワインで十分。デザートもいいが、チーズ好きの方はぜひ4種試したら。あと無料(?)で出るパテ、パンもおいしいが、食べ過ぎの傾向になりやすい。

某医学部大学院助手32才の方からの質問です。
「質問ですが、独創性を追求できるのは今の日本の研究費獲得のシステムでは、完全にestablishされた研究者しか(研究費の心配のない)望めないように思えます。若い研究者ほどお金がないし、将来の不安がある中で、独創性の追求を許すようなシステムは生産性という観点からはーー対極に位置するように思えます。若い研究者が、独創性と生産性の両方を追求されていることについてどのようにお考えでしょうか?
 自分なりの解決策としては、趣味的実験はやめないでおこうと常日頃から考えていて、ーー、残りのお金、エネルギーは生産性を追求するのに費やしているように思います。こんなことでは、趣味的実験のほうは進まないですよね。だけどどちらかというと趣味の中にこそ、本当の独創性が潜んでいるのではという夢と希望を託している面もあります。」

重要な問題提起ですが、わたくしは正面から答えたくないです。もしもそうすると、誰でも独創性を追求できます。趣味的なものでも生産性を追求するものでも、どちらでも独創性は追求できるはずという、面白くない返事になってしまいます。つまり、こういう問題提起では、なかなか問題は解決しないですね。お金があれば、つまり研究費があれば余裕がでて、それで独創性が生まれるとは決して思いません。お金を貰いすぎて、独創性のかけらも無くなった研究室が多いし、この間までは、そこそこの仕事をしていたのに、研究費が潤沢になったらとたんに、研究が面白くなくなったPI達の顔がわたくしの前を走馬燈のように行き過ぎていきます。
しかし、一方で、研究費が無くて本当に困ってる人達も沢山います。ある意味では大部分かもしれません。研究費が無いために、苦労してる人達から見れば、わたくしが何を言っても「そんなの役にたたん」と思われるかもしれません。わたくしも、教授になってから15年くらい、研究費が足りなくて苦労しました。特に40前の頃は。尿から血が出るとかいいますが、米国学会中の結石での七転八倒も研究費の苦労が遠因かもしれません。研究費のストレスは一年中続きますから、気にしだしたらきりがありません。

ちょっと、話しの向きを変えます。わたくしの父親は洋画をやってました。子供の頃父の絵描き仲間が大勢よく遊びに来て、大声で議論してるのをしばしば聞きました。あいつは売り絵を描き出したからおしまいだ。あんな絵を描いていたら、人間も腐るし絵も腐る。売り絵を描いたらいかん。父親の友人は父も含めて絵を描く以外に生計の手段を得ているのが(例えば教師とか絵の具とか画材売るとか喫茶店経営とか)多いので、そんな余裕のことを言ってるのではないか、これが子供心の反論でした。でもこのような話しを聞いて、芸術の厳しさを子供心に理解したものです。あとあとこの原体験的な知識が芸術畑へのわたくしの志望の気持ちを萎えさせたのは事実です。
研究を志したときに、研究費が将来たいへんになるなどというコンセプトはまったくありませんでした。いわゆる「親方日の丸」だし、わたくしの研究はものすごく安上がりだったので(大腸菌ファージですから)、自分と学生二人くらいなら、大学に自動的に来るお金でじゅうぶんできるとうそぶいてました。研究自体、お金が無いのに、でも苦労も全然しないで、本当に思う存分楽しみました。そのうえ、この間の奈良の会ではHY君がわたくしの生涯のベストの作品だと言ってくれました。結局、PIになり、遺伝子組み換え法やDNA配列決定関係の研究費が必要になり、それで研究費獲得のあり地獄に入っていったわけです。
でもどうでしょうか、わたくしの場合、独創的な研究を目指す気持ちは、研究費の額とほとんど、関係がありませんでした。要するに、お金がかかる研究をしたいと思い立つから、お金がかかってしまうのです。研究室に来ようとする大学院生などを拒めば、研究費も安くなるはずですが。余裕を得るために、研究費を獲得するのでないですね。研究が雪だるまのように大きくなるので、それを続行しようとすると研究経費が拡大していくのですね。自分の動かせない雪だるまは絶対作ってはいけない、これわたくしのPI稼業での教訓です。
ここから先は書くのが難しく、とうてい休憩時間のような遊び心で書けることではないのですが、独創性は、結局生き様の問題と思うのです。
わたくしの場合、心の中に自分の研究上の村落というかコミュニティがありまして、そこで生きているので、その村落のなかで独自の存在として、記憶にとどめられるような、作品を作り、そして人間としてもおもいだしてもらえる、そんな感じなのですね。村落とは、もちろんvirtualなもので、世界のあちこちでにたような考えで研究している人達です。
ちょっと、今日はこれ以上書いてる時間が無いので、また明日、時間があったら書きます。
ここまでで、ある程度質問に答えてるといいのですが。ちょっと中途半端ですね。すみません。

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