8月15日  August 15

今週(8月11日号)のNatureには面白い論文がありましたが、同時に研究者の定年についても興味深いリポートがありました。かつて同僚でいまはシンガポールに研究室を構えておられる伊藤教授のキッパリとしたコメントに同感しました。63才定年制は(活発に研究をしているものにとって)残酷(cruel)であると。この当たり前のことが周知されるまでには日本ではまだ何年も時間がかかるでしょう。

きょうはラボにでてみたら、ひどく人が少ないので驚きました。お盆は正月三が日なみなのかもしれません。すくなくとも当研究室にとっては。それでも、話すべき人間は皆居ましたから、用事はすべて済みましたが。

知恩寺の「手作り市」にちょっとだけ出かけました。出店は多いが人出は少なめでした。F君のやっている陶器にも寄りました。紫蘇ジュースをご馳走になりました。だからというわけではないのですが、いくつか買いました。ちょっと元気がないみたいなので、気になって話しかけたら、理由を言ってくれました。

8月15日、60年経って、世の中でだんだん肩の力が抜けた議論ができるようになりました。それに非常に多くの人達が内容の濃い議論をしてるようです。大学人やマスコミ人(新聞関係)にはあまり啓発的な議論を出来る人がいないみたいですが。少数の政治家はさすがにもまれてるせいか、勉強もしてるし、真剣に考えてるのか、耳を傾けたくなるような意見を言える人が増えてますね。それから、ためにする意見は直ちに反駁されるので、党派的意見の無意味さが多くの人に理解されるようになったこともとてもいいですね。それから、中国や韓国の人々による意見のおかげか、意見の分布がかなり俯瞰的に見えてきて、選択肢的にも考えやすくなってるのでしょうか。しかし、そうはいっても8月15日問題は深くて困難です。

戦争責任を日本人自らが追及しなかったことがまずかったと言う意見が増えてますね。その通りだとおもいます。今からでも遅くないし、新事実を丹念に集めて、どのような戦争責任が日本人の多くが納得のいくものであったかを議論するのはとてもいいことだし、若い世代がぜひそれに参加して貰いたいものです。

戦後、米国による占領時代にいったい何が行われたのか、追放(パージ)や言論統制や親書の開封などによる情報・諜報活動などの実態をいまからでも詳しく調べるべきだと思います。50年経てば守秘事項もほとんど公開すべきだし、かつて従事した仕事についても発言する人達が出てくれるといいのですが。出てきた新事実を決して、党派的に解釈しないで、事実は事実として受け止めることが大切だと思うのです。そのうえで、占領下の日本が講和に向かい、ふたたび独立国家として国際社会に出て行く、その経緯を若者を中心にしっかりと再理解をすることが、これからの日本という国の行くべき道を考えるうえで大事だと思うのです。そのような契機をつくるものが「新事実」だとおもうのです。そういう点では、理系も文系もおなじ、真理探究のための、新事実発掘というか発見が最重要と思います。

わたくしは、「いわゆる平和主義者」ではありません。自らの国は自らの国民が武力を用いることも考慮して、守るべきだとごく常識的に思ってます。そのために、軍隊を持つこともあたりまえのことだと思っております。今から30年近く前から言い続けて周囲の顰蹙を買っていましたが、「せめて中学校で、かんたんな軍事教練をやったらどうか」と言ってました。でもわたくしは決して右翼ではありません。単に「ひとつの常識」を言ってるまでです。現今の自衛隊が軍隊組織として相当な力量があるだろうことは、間違いないでしょう。しかし、自衛隊が真の意味で国民の軍隊になるにはまだまだ時間がかかり、山や谷がたくさんあるでしょう。そのうえ、米国との関係でぎくしゃくせずに対等の軍事的な安全保障条約をもつためには、国民の政治的成熟と傑出した政治的指導者が必要と思われます。そもそも、日本の平和が米国の核の傘のもとにおいて続いてきたことを因果関係として認めたくない心情がいまだ多数の国民を占めていることからも、憲法の9条の精神はひろく浸透してることは事実です。
だからこそ、われわれはそろそろ米国の軍事的な従属関係に深い思慮が必要なのだと思います。
戦争はほとんどの場合隣国と起こるものです。ですから、隣国との友好関係は世界の中での諸国とのなかでもとりわけ大切です。最近の6カ国協議の国々と台湾を入れて、われわれが最大限の友好関係をはかるべき国々ははっきりしてます。同時にこれらの国のうちのいくつかは相当な軍事力が統制的な政治権力に握られてることも、忘れてはいけないでしょう。いっぽうで、日本はいつまでも米国が日本を無条件にまもってくれるなどという、不確かな信仰に頼らず、自分のことは自分で面倒見られるように努力すべきでしょう。そうすれば、米国も含めて、隣国の我々を見る目も変わり、より安定的な友好関係が築けるものと期待できます。

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