わたくしが通勤で乗降する山科駅は、湖西線と琵琶湖線(昔の東海道線)の分岐点で、二つの線の電車がひっきりなしに同じプラットフォームにやってきます。帰路にもしも間違えて乗ると、かなりの時間のロスになります。
通勤歴30年近い長い期間で、数回うっかり間違えて乗ったことがあるので、電車に乗るときには気をつけます。ぼんやりと考え事して、うっかり乗ってしまい、どちらもすぐトンネル(長等トンネルと逢坂山トンネル)になるので、気がつかないのですが、大津駅に近くなって気がつくわけです。正しい方は西大津駅といいます。
しかし、この湖西線と琵琶湖線、意地悪としかおもえないような終点、つまり行く先の電車が頻繁に来るのです。
永原と米原、これ電光掲示板の感じとしてかなり良く似ています。駅のアナウンスを聞いていても、ながはら、まいばら、なんとなく似ています。永原は湖西線の奥の方の駅で、米原は東海道線の先で北陸線との分岐駅です。アルファベットで書いてあると、長浜行きの電車と永原行きも相当間違いやすいです。どちらも新快速電車で来ることがあるので、間違えた人たちは相当いるはずです。Nagahama, Nagaharaですから、アルファベット頼りの外国人だとこのぜんぜん違う方向の電車の識別がアルファベット一文字違いですから、相当不安になるに違いありません。最悪なのは、電車がよく遅れて同じ時間帯に来ることもあるのです。
湖西線ではもう一つ問題があります。
プラットフォームがそっくりなのです。全線高架ということと、JRが好きな画一性で、高架の駅はどこも良く似ています。わたくしが降車する比叡山坂本駅とひとつ前の唐崎駅はほんとによく似ています。駅だけ見たらちょっと区別に苦しむでしょう。外の景色はすこし違いますので、わたくしはこの外を見て確認してから降りるようにしています。これまでたぶん10回くらい唐崎駅で降りて階段をだいぶ下りてから誤った駅に気がつくことがありました。幸い、最終電車のことはありませんでしたが。
このそっくり駅には多くの通勤客が困ってることは確かで、ある時わたくしがまだ日曜囲碁クラブに行ってるときですから、15年以上前ですが、このことを話題にしたら、みなさんいかにして識別するか秘策をつぎつぎに開陳して、非常に面白かったです。
しかし、その中でひとつえっと驚いたのは、Sさんだったか、唐崎駅にはひとつ変な柱が立ってますよ、この柱があるか、無いかで区別していると、言われたことです。そんな柱があったかしら、わたくしはたいへん疑わしく思ったものでした。
それで、さっそく次の日、つまり月曜日に、電車の中から、唐崎駅を目を皿のようにして見ていましたら、確かにありました。階段降り口になぜかひとつ他と違った柱が立っていました。理由はまったくわかりません。
成る程、こんなものがありましたか、ふーんと、感心したものでした。
それ以来、わたくしが帰途降りる駅かどうか確かめる際に、この唐崎駅の柱を見る癖が増えました。外見からはわかりませんが、ひとつ生きる上での知恵が増えたのでした。
わたくしの人生にとって、唐崎駅の柱的な知識はずいぶんあります。こういう知識の集積で人とはちょっと違う人生を歩んでるのだと思います。やはり、人生の師はどこにでもいるのです。