捏造問題のつづき

新着のNatureを開けたら、多比良教授の論文不正問題についての記事が出ていました。
東京駐在の記者の記事で、経過と東大での調査結果のニュースでした。日本の対応にはいろいろ穴があるとか、全体的に日本のやり方には明確な指針がないとか、批判されて当然なものばかりで、特に目新しいコメントはみつかりませんでした。本当は2報のNature論文刊行を担当したエディターが書いたらもっと、興味深かったと思うのですが。
読売新聞を見ると以下のような記事が出ていました。
東京大学大学院工学系研究科の多比良和誠教授らによる論文データねつ造疑惑をめぐり、多比良教授の代理人は5日、大学による調査の停止などを求める通知書を小宮山宏学長に郵送したことを明らかにした。
 多比良教授側は、4日発送した通知書の中で、調査の根拠、調査事項など重要な事柄に関して十分な説明を受けていないと指摘。多比良教授らが求められている再実験について、スケジュールに無理があるうえ、大学側は途中経過で判断しようとしているなどと批判している。
 そのうえで、調査を一時停止し、多比良教授との間で調査の目的、対象、スケジュールなどに関する協議の場を設け、調査方法を見直すことなどを求めている。また、調査結果が教授の処分につながる可能性がある場合、必ず反論の機会を与えるべきだと主張している。

わたくしの感覚では、大学側が性善説(しばらく前のブログで論じました)に基づいて調査をしたのが、逆手に取られてると思いました。本来は研究者側が、自らの研究発表に疑念を示されたら、それを自ら迅速になおかつ明確に晴らすのが義務なのです。それをしなければ、不正があったと認められてもしかたがありません。そもそも実験ノートがないとか、データがコンピュータ内で消失したとか、そういう理由が通るはずもありません。
調査されるのはけしからんとか、研究コミュニティーに甚大な迷惑を与えているということについて反省の言もないのは信じられないことです。
いつの間にやら、研究者の人権問題に論点をすり替えられる原因を大学側が作ってしまったのかもしれません。日本という国における、研究者コミュニティーの脆弱さを強く感じます。

日経新聞をお昼御飯の時に見たら、野依理化学研究所長と日立の社長さんが捏造問題について意見を述べてました。日立の社長さんの意見の中に、内部告発の奨励というか重視がありました。たしかに実は内部告発がたいていの場合、こういう捏造問題の発覚につながっているのです。しかし、民間企業の場合、内部告発があっても、それが社外に出ることはまずないでしょう。それに対し、大学とか公的研究機関では、機関内で秘密にするとかそういういことはやってはいけないのです。そのあたりの違いは述べておられませんでした。そもそも企業利益追求の場でのデータの扱いと、公表を最終目標にする、公的研究では、まったく思想の根本から違います。

韓国のほうでは、今日のニュースでは、
論文捏造の黄教授、62億ウォン不正使用・韓国監査院、日経など各紙にでています。黄教授が政府や民間の研究支援金約62億ウォン(約7億6000万円)を管理、不正に使用していたのだそうです。民間からの寄付のほうは大半は個人的に大学に届けずに使用していたらしいとか。こういうニュースは聞くと、かなり暗い気持ちになります。しかし、一方でやはり、という感は否定できません。いったい何に使ったのでしょうか。なぜ、という疑問が湧いてきます。

どれを考えても、気分の悪くなるような話しです。
ところで、依然として、はっkりしない大阪大学での捏造問題での対応はわたくしのところにも、もうすぐ処分内容が発表されるとかいう、話しはいろいろ聞こえてきますが、その細かい内容を聞いても、確認できるような情報はありませんのでここで同時に議論できないのが残念です。

まだまだこのようなことが次々と出てくるのかもしれません。
日本の研究機関では、研究そのものの不正以外に、セクハラ、アカハラの問題の類も相当に深く潜行してあるので、やはりこれらも外部にでてきて世間の常識のもとで議論した方が、どこまでが許され、どこからは許されないか、そのボーダーがはっきりするのかもしれません。

ところで、きょうはまたまた天気も悪く、どうも悪天候が際限もなく続く感じです。
仕事のほうは、日曜日にボーつとしていたせいか、はかどりました。
やはり緩急のテンポが必要なのでしょう。

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