奈良県高校生、放火殺人事件について

暗い話しになりそうで、極力話題にしたくなくてなるべく避けていたのですが、この継母と腹違いの弟妹を放火で殺してしまった、高校生についていっぺんは書いておかないといけないような気がしてます。新聞などに書いてある犯行の理由に挙げられる、受験や進路に関係した点にはあまり納得がいきません。父親の叱責と体罰はかなりの原因を作っていると思いますが、それだけで母と幼い弟妹を殺すとはなかなか思えません。

わたくしが子供の頃には尊属殺人は死刑か無期と聞いてました。つまり、親を殺すのは殺人でも一ランク刑罰が厳しいと。最近では、親子間の殺人が多くて本当に驚きます。なんか気軽に親子間の殺人が起こる感じです。本来情が一番深いはずの親子で殺し合いが増えるのは、人々の気持ちから、情がどんどん減っているのでしょう。世の中のモラルが著しく変わったのでしょう。ですから、無抵抗な幼女を性的暴行をしたあとで殺したりするのにば最も厳しい刑罰を加えるべきだというような意見が説得力がでてきます。

この奈良の高校生がいた学校は大学受験に関心のあるひとなら誰でも知っているところで、受験的に最も成功しているほんの一握りの少年達がいくところです。しかし、このような悲惨な放火殺人事件と受験勉強が直接リンクしているとは、なかなか思えません。両親が医師という経済的にも教育的にも極めて恵まれた家庭がなぜこのようになってしまったのか、で多くの人達が関心をもっているのでしょう。なにかはっきりした原因はあるはずです。わたくしもそこに関心があります。

昔、日本残酷物語というオムニバス映画がありましたが、その筆頭にくるような残酷な話しです。殺された母と弟妹達に思いをいたせば、その残酷さは歴然としてます。
この少年の短い人生を事実をもってたんたんと描いていけばここに到ったこの少年の心象風景は見えてくるような気がします。この少年は実母を非常に慕っていたようです。両親が離婚の時に、分かれねばならなかった妹と抱き合って離すのが大変だったと、週刊新潮に書いてありました。離婚の時に、もう母とは二度と会わないという条件があったとか。しかし、実際には会っていたようです。離れて住む実母と再婚した実の父親、それに妹ともういちど幸せだった時を取り戻したいと少年が夢想したら。

わたくしは、体罰を加える父が憎い、殺意を感じていた、しかし父が怖いので、代理で継母を殺したとか、そういう説明はピンと来ません。また、継母に対する不信とかそういう説明もピンと来ません。恐ろしい説明ですが父と母と昔の生活が戻れないかと、その最大の障害を除こうとしたのではないかという印象をもちました。幼稚な考えですが、高校一年生ならまだまだ子供です。この説明にはまだ情があります。

わたくしが高校の2年のころに昔は良かったと連発していた友人がいました。
受験勉強はやればやるほど過酷なものになります。10代半ばから後半にかけて子供らしい楽しみの多くを捨てて受験に励む、子供達の心はたいへん空虚なものになりやすいとおもいます。そのうえに父親の叱正、特に体罰が心をくらくしたでしょう。未来に楽観的な希望が持てなければ受験教育の始まっていなかった過去が楽しい記憶を伴っているはずです。この少年の場合、特に過去が実母のいた時代が、甘美なものとおもわれてだしょう。

受験をなんともおもわないような受験に強い子供達も稀にはいるでしょうが、大抵は大なり小なり受験によって人間性がおかしくなるのではないでしょうか。わたくしも30代前半までは試験勉強や受験についての悪夢を見た記憶があります。

親と幼い弟妹を殺してしまう行為をしてしまうことと、父親のエキセントリックなまでの受験勉強を強いることとが直接結びつくとも思えません。ただ、そこに強烈なまでの過去の賛美があると、現状を否定する行為が出てきて、場合によっては、それが信じられないような否定のエネルギーとなることは考えられます。
この少年の犯罪もそういうことで現状からの逃避、過去の時代に戻りたい夢想のようなものをベースにしてる気がします。たぶん家を燃やして無くすという行為、現状を消しゴムのように消すこと、これがこの少年がしたかったことなのではないか、その時に3人の家族が死んでしまうことが重要にかんじられなかったのではないかと思いたくなります。希薄な家族関係だったのかもしれません。

殺意がはっきりしない、家族に対する殺人だからこそ世間を震撼させているのでしょう。そして世間でいうもっとも賢いはずの子供がそのようなことをしてしまう時代の怖さをかんじるのでしょうか。
父親については言葉がありません。

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