イノベーションとは革新、刷新とか新機軸というような意味で、これが研究とか技術開発に対して使われるのなら、研究の概念変化とか技術革新とかそんな意味になりますね。とりあえず新しいということです。新しさを求めることにより、世の中が変わるというように使われてきているわけです。
本日はわたくしが考える二つのイノベーションのアイデアを記しておきます。
ひとつは、新しい農業と新しい土木技術の合体です。
おおざっぱにいえば、先端的な農業と人間工学、生命工学とでもいえるような新土木工学を作り、これらを合体して、あたらしい日本の自然空間を作っていくというものです。この間の、学術会議の委員会のあとで委員のお一人と会の後に、立ち話をしましたが、土木の専門家としては、まさに生命科学とこれから土木科学は融合するだろうという、大変に心強い意見をきき、その日はたいへん気分がよかったものです。
日本の先端的な農業にはわたくしは、かなり楽観的で、農業空間が良質になれば、たとえ収入が多くなくとも、農業をやろうとする若い人達は間違いなく増えるはずです。個人にイノベーションの気持があれば沖縄から北海道まで、この豊かな自然から作られる、優れた農業、食品、酒などの発酵産物、サプルメントなどの産物は自然に強力な輸出体質を持つにいたるでしょう。
農村風景、ひらたくいって、田舎の美しい風景が豊かな日本の象徴になることがこれから20年最大のイノベーションとおもいます。そのためには、戦後作り上げたコンクリートで固めた環境をいっぺん壊して、本来の自然にできるだけ近い環境を復活させねばなりません。無駄なお金とはおもわず、修復、再建、復活をつうじてまったく新たな環境が生まれてくるとおもえばお金はいくらかけてもいいとわたくしなどはおもいます。
もう一つは、疲弊した大学などをいかに活力あるものにするかです。国立大学は、独立法人化後、見かけの改革と異なって、内実は多くの大学で疲弊化が進行しています。その理由はいくつかあるのですが、ともあれ、暇がなければいけない、教授達が忙しくて肩で息をしているのです。その多くは経費削減に対する恐怖からおきているのです。全体の経費はそれほど下がっていなくても、いろいろの事情で個人は追い込まれているのです。
わたくしは大学に今とは別ルートのお金が入らなくてはこの疲弊化進行は止まらないと思います。
そのためには、税制の改革以外に道がないと信じております。
つまり、大学や公的な研究所などに寄付をしたら、一種の免税そちというか、損金あつかいというか、とまあれ、研究機関に寄付すると税制上、税金を払ったと同じような効果、場合によっては寄付を加速するような効果を内包した税制が確立すれば、大学の雰囲気は一挙に変わるでしょう。つまり、寄付を受けられるような理由を考えるし、そのようなイノベーションが続々と出てくるはずです。
研究者の体質も変わるでしょう。寄付を出す人達も千差万別です。みながみな役に立つ学問だけに寄付するとは限りません。創業的な経営者は、先を見るでしょう。大学が日本の文化の百花繚乱の元という本来の姿が生まれてくるのではないでしょうか。
これを書くかどうか、迷ったのですが、パチンコ業界に寄付体質を植え付ける、税制政策はないでしょうか。パチンコ業界の売り上げは、国内乗車販売を上回るといいます。
この、売り上げの一部を、寄付させるべきです。そんな金はいらんというひとたちはもらわなければいいのです。でも、それでももらって、大学を良くしたいと願う人もいるでしょう。パチンコを国民が止められないのなら、その一部は確実に意味がある方向に回せないものでしょうか。
わたくしは、文科省の科学研究費2000億円が、たとえば武田製薬株式会社一社の研究開発費よりはるかに下回る現状では、なにか抜本的な方策を打ち立てる方法がひつようだとおもうし、そのためには税制の改革以外にはないと、もう長年おもっています。
ただ、繰り返しますが、国民に納得してもらうには、寄付をもらうためには、大学の体質の変化が必要とはおもいますが。