昨日イニシアルでのAHさんとは2004年にノーベル化学賞を授与されたAvram Hershkoさんのことでした。エネルギーを必要とする、タンパク質分解の機構を発見したのです。きょうは彼が京大を訪問されました。わたくしのところには11時くらいからで1時間くらい滞在されて、他に5,6人の先生方の研究室を訪問した後に、午後4時半から講演をしました。非常におおぜいの参加者がありました。300人以上いたのではないでしょうか。大成功です。この講演会を準備したK先生の尽力に感謝。講演の内容もとても良くて、若者たちにとって、感銘の深いものだったでしょう。温顔を絶やさない人ですが、学問的にはたぶんみずからのデータにも非常に厳しく、いつ聞いてもすばらしいなあ、と感嘆しています。わたくしの研究室のほうの仕事にも非常に適切なアドバイスを得られたものでした。沖縄から出てきたT君にとっても充分に価値ある旅行だったでしょう。
晩ご飯はご夫妻の希望も入れて、御影通りのBに行きました。奥さまとHershkoさんと7人でなごやかに色々なことを話しました。医学部というか病院のT先生もおいでになりました。こういう晩ご飯を一緒にするのが、研究者にとっては一番大切な時間の一つです。
むかし、大阪大学の学長をされた赤堀先生に聞いた話しですが、学問というか、学者のつきあいというのは、ある意味で国防と同等なもしくはそれ以上の価値がある。このような損得抜きで非常に親密に詳細にわたって色んな話し合いを国を超えてするのは、国際的な友好性では最も高いもので、これ以上の防衛的な価値のあるものはない、というものでした。わたくしもこの年になると、まったく同感です。
これ位いろいろ話し合いをすると、戦争などという行為がどんなに馬鹿馬鹿しいかがわかります。回教徒の国の人たちの国でも自然科学が再興するといいのですが。ルネッサンス以前の欧州では回教徒がはるかに高い文化と自然科学の知識を持っていたのですから、充分可能でしょう。基礎自然科学と企業の人たちの研究の一番の違いは、われわれはなんでも開けっぴろげに話すのですが、企業の人たちはしゃべれないのですね。
ともあれ、Hershkoさんと過ごした、二日間とても気持のうえで充実しました。
家に帰ると、地震があったそうで、そのあとやって来るであろう、津波のことでテレビはどこをつけても警戒警報でした。これは決して騒ぎすぎということはないのですね。テレビ側だけの一種の訓練というか、練習のような感じを受けました。叱られるかもしれませんが。