きょうは分子生物学会の年会の代替えのフォーラムに出席するために名古屋です。前日から行くのは、学会の評議員会があるためで、これが今年から発足する学会のNPO法人化のための発起人総会ともなります。そういう意味では学会にとって記念すべき年でしょう。
この学会はもともと年会をやるために生まれたようなもので、その風通しの良さから、数百人の会員がいまや1万5千人になっているのですが、本来の存立趣旨が年会の開催にあったために、学会の使命とかそういうものに関心をもつ会員もきわめて少数だったので、運営自体はごく少数の会長、幹事、それに評議員によってなされています。ただ学会欧文誌の発刊や、年会での動くお金がかなりになってきたこともあり、任意団体というあいまいな存在では社会的にも許されない状況となり、とうとうこのNPO法人化にこぎつけたわけです。関係者のかたがたの努力は相当なものでした。
しかし、一方でこれまでは気楽にやって来たことも、法人化ということになったし、また二本立ての会の運営も一本化になるので、こんごいろいろ大変でしょう。しかし、法人化することは時代の流れ、かならずやらねばならぬことでした。ここまでやって来た、会長および幹事の方々と事務方の努力に感謝です。
次期は評議員にはならないので、たぶんこれがこのような会合に出る最後になるでしょう。
明日は、雑誌のGenes to Cellsの編集委員会を昼食時に開催します。現状を報告しますが、またみなさんの忌憚ない意見を聞く場でもあります。アシスタントのMさん達にも準備資料を作ってもらいました。今回は学会は発表のほうはどこからも座敷がかからなかったので、それが終わったら、わたくしの研究室のテーマに関係あるセッションにすこし顔を出して、いろいろなひとと立ち話をして、帰ろうと思っています。
今朝の読売新聞に一面のほぼトップにまた沖縄科学大学院関係の記事が出ました。沖縄科技大予算、“政治圧力”で評価格上げ、と見出しにあって、国による科学技術施策の「格付け」作業で、国が沖縄振興の目玉として推進している「沖縄科学技術大学院大学」構想の評価が、関係閣僚や内閣府沖縄振興局の強い要請を受けて、公表直前に最高の「S」ランクに“修正”されていたことが関係者の話でわかった、とリードにありまして、科学技術の専門家が審査し決定した評価が覆るのは極めて異例で、評価過程の不透明性が問題となりそうだ、とあります。
この記事でわたくしが強く関心を持ったのは、以下の記事の部分です。
関係者の話を総合すると、同大学構想に対する評価の付け替えが行われたのは05年度と06年度予算分。いずれも専門家らの判定は「A」(着実に実施という評価)だった。 〈1〉開学時期〈2〉研究・教育の組織〈3〉教育カリキュラム〈4〉学則・教務規則〈5〉学生の生活環境——などが不備であることを指摘し、「早急に具体 化し、開学までの明確なスケジュールを示すべきだ」と注文を付けていた。ところが、指摘事項はそのままなのに、公表された評価はSに変わっていた。総合科技会議の関係者らは「関係閣僚が政治判断で、S(積極的に実施)評価維持を強く求 めた結果、不自然に覆った」と証言している。総合科技会議の専門家らが下した判定に対し、関係閣僚が直接見直しを求めること自体、極めて異例だ。沖縄振興 局も強く見直しを要請していた。
時間がないので、いつかもっと詳しく論じたいのですが、沖縄を特別扱いするのは、当たり前のようにおこりますが、それは決して県民が頼んでるわけではないでしょう。この、特別扱いが県民にとって格別にいいものをもたらしてないことが経験から分かっているからでしょう。その、特別扱いの結果何が起きているのか、具体的にみると、よく言われる、本土資本にお金がいってしまうとか、米国人基地関係者の値段のたかいマンション代に消えてしまうとか、沖縄に来てみれば、これがかなりリアルに分かるのです。
この沖縄大学院でも、特別扱いが当然という論理を政治家や役人が持つのは決して後々良い効果をもたらさないと思うのですが。
なお、このブログを書いた後で、政府関係者がこれらの記事を全否定する会見をしてるので、それも(読売新聞の記事)以下にペーストしておきます。
国が推進している「沖縄科学技術大学院大学」構想の予算格付けが、公表直前に、関係閣僚らの強い要請を受けて最高の「S」ランクに修正されていた問題で、塩崎官房長官は5日午前の記者会見で「特に政治的な圧力があって格上げされた事実はないと聞いている」とし、問題はなかったとの認識を示した。
また高市科学技術相は同日の閣議後会見で、「(総合科学技術会議が)十分に議論した上で、最初からS評価だったと聞いている」と述べ、圧力を受けたとの見方を否定。「特定の政治家が会議の先生方に一人ひとりアプローチして、ねじ込んだということなら圧力だろうが、そういうことではないので問題はない」との認識を示した。
一方、同大学準備組織(独立行政法人)のシドニー・ブレンナー理事長の国内勤務日数が極めて短い問題については「余人をもって代え難く、常に連絡していると聞いている。世界級のものを造るなら、例外的なことも仕方がない」と話した。