きょうの読売の記事の見出しを借りました。
つまり無くなると癌になりやすくなる癌抑制性をもつタンパク質p53が、心臓では逆に細胞増殖を抑えることによって新規血管の形成を抑制することから、心不全を起こしやすくするというものです。
千葉大学の循環器内科部門の小室教授たちの最近の研究成果を要約したもので、この研究はなかなか面白く考えさせられます。Natureのオンラインでの速報に出ただけあって、医療でのニュース性があるだけでなく、基礎分野のわたくしのような人間にも強く訴えかけるものがあります。
だいたい心臓の細胞はほとんど増えないときいていましたが、そんなところで癌抑制遺伝子が興味深い働きをしているとは、意外だし、面白いですね。
そういえば、昨年の9月に小樽での会合で出会った人達は日本の循環器分野の元気のよい人達で、かれらの基礎分野への情熱に感心したのでしたが、そのこととこのような水準の高い研究成果の発表が無関係であるはずがありません。
細胞増殖はかたや抑制がとれると癌になり、いっぽうで心臓においては酸素ストレスがひどいと細胞の傷をうみだしp53が活性化されて細胞増殖をおさえ、その結果新規血管形成が抑制され、その結果心不全が起きやすいのならば、癌のおきやすい状況にもっていくという瀬戸際作戦で心臓での傷のつきやすい状態を克服することになるのらしいです。そういえば心臓には癌がありません。p53が失われることが、善いことに結びつくという点でも、深みのある発見のように感じました。これからの研究が楽しみです。
また明日から、沖縄です。
月末での沖縄ワークショップのプログラム作りの仕事もありまして、いきます。
そのあと東京での会議に出る必要があります。
あしたは早起きをしないと。