６２回目の原爆忌で、ノー天気な精神科医医師

きょうは広島原爆忌、わたくしにとって一年間でいちばん重い日で、真面目に考えねばならぬ日です。
しかし、原爆の問題はあまりに多岐にわたっていて、そのどれもがひどく難しいのできょうは、そのうちの一つの問題にだけ絞って考えてみます。

もしもわたくしが被爆者で震災の日に死んだとしたら、何を考えたでしょうか。おそろしいほどの恐怖と怒りをかんじたでしょう。この恐怖を実感するのは不可能ですが、でも広島に行き原爆記念館をおとずれれば、そのごくごく一部を実感するのは可能でしょうか。
死に行く広島の人々の怒りはだれに向かったのでしょうか。
このおそろしい武器を考え作った人達とそれを使用して投下した人達でしょうか。
今日の新聞をみると、物理学者オッペンハイマーは原爆を東京に投下、特に皇居の真上に落とすことを強硬に主張したとあります。つまり、考え作った人達は科学者、技術者でした。しかもそればかりか、一刻も早く使用することを主張したのでした。トルーマン大統領を代表とする政治家達も一刻も早い投下を考えていたことは間違いありません。
当時の日本が、いまのアルカイダなど比較にならないくらい連合国の国々では憎まれていたことを忘れてはならないでしょう。世界の平和を攪乱する日本に対する、制裁、報復はいかなる手段でも許されるとでもおもわれていたこともだいたい間違いないでしょう。このような感覚は、大きなテロがもういちど米大陸の主要都市で起これば、米国がどのような報復をするか無差別なものを含んでも激しい批判が起こるかどうか疑問であることから見て、東京や大阪での無差別爆撃について当時の連合国側で批判的な意見などなかったに違いありません。
なぜ日本は米国に対して戦後、原爆や無差別爆撃について激しい怒りをもつことが出来なかったのでしょうか。反米はあっても、原爆や無差別爆撃の戦争行為を激しく怒ることがなぜ出来なかったのか。その不可解なセンチメントは、よく言われるように、過ちはくりかえしません、というだれが言ったのか主語のわからない文で原爆投下が総括されてることからも明らかです。わたくしには、もちろん主語は日本人で、米国人ではまったくありません。どこにも、米国を批判したり怒ったりする内容が込められていません。もちろんいまだに米国の一人の要職の人間が謝罪をしたこともありません。米国の教育では、原爆投下はとてもよかった、と続けられているのです。

中国人はいまでも日本人に怒りを燃やしています。過剰なまでの憎しみの教育を日本および日本人に対して行ってきました。
理由の無いことではありません。日本軍は、重慶で無差別爆撃を行いました。そして中国本土のすべての戦闘行為で民間人を理由もなく殺しています。その絶対数が問題なのではなく、中国本土において、日本軍が民間人を理由もなく殺したケースはたくさんあったことは間違いありません。日本はこのことについて、何度も謝罪しています。しかし、中国人は日本を決して許さないし、許そうともしない、それだけ彼等は怒る理由があると日本人は考えたほうがいいのです。怒るからには、それだけの理由がある、まず考えるのが普通でしょう。中国人は異常だと思わないほうがいいでしょう。

日本人は米国、および米国人に対して原爆投下や無差別爆撃を怒ることをしません。これは美徳でしょうか。本当に怒るはずのところをこらえて怒らないなら、美徳にちがいありません。しかし、怒ることすら気がつかない知らないで怒らないのなら、美徳でもなんでもなく、単に世間知らず世界知らず、と言わざるをえません。原爆投下について激しく米国に怒らない過去、現在の日本人のほうが異常だというのが、世界的な相場でしょう。

日本が歴史の中で正しいタイミングで怒ってこないと、このツケは次世代にまわります。わたくしには、ツケがだんだん顕在化してきているとおもいます。
日米友好などといいますが、本当に友好的な二国間でしょうか。経済の結びつきは極めて強いが、文化的な交流は年々細っているというのがわたくしの実感です。

次世代、次次世代の日本人は中国人やコリアンから責め続けられるでしょうが、日本人は戦争についてなんらの申し開きもできずに原爆で死んだり、大空襲で死んでいった人達の霊に向かって、言うことばを持たないのです。

原爆投下はしょうがない、と現職の防衛大臣が発言したのはついこの間のことですが、米国ではしょうがないどころか、いまでも日本への原爆投下も無差別爆撃もとても良かったことだという教育が行われているのです。

６２年経っても、日本はいまだに国家の独立性と一体性をもつための戦争観をもてないのです。日本の次世代、次次世代に申し訳ないと、わたくしは思います。沖縄の人達がいまでも日本軍の行為にたいして激しい怒りをもつのは当然だとおもいます。教科書問題が沖縄でだけ問題になっていて、本土ではまったくならないのは、原爆投下についての怒りを正しい標的に向かえないことと、表裏一体とわたくしは思っています。

話しがまったく違うのですが、朝青龍を診断した精神科医のノー天気ぶりに驚きました。この医師は日本で格闘技の相撲で一番強い横綱を診断したという意識が全くないようでした。これまでこの横綱が土俵上で型破りに荒々しい、ということくらいの予備知識すらも無かったのでしょうか。出稽古でひどい目にあって怪我をした力士が沢山いたはずです。医師は横綱は可哀相、とか言っていました。とんでもない医師で、世間の精神科医医師に対する信頼感を著しく下落させたと思います。
朝青龍は説明もなしに、治療のためにモンゴルに帰りたいのなら、まず協会に横綱の地位を返上してから帰るべきです。それがいやなら、協会が地位を剥奪して、それで国に帰せばいいでしょう。横綱の周辺には、なにかとんでもない澱がたまっていたのか、という印象をもちます。医師の言うことに一部の真理があるのなら、とんでもない「赤ちゃん横綱」を協会は見て見ぬふりをして温存させていたということになるのでしょう。