ホルメンコーレン着、ゲノムDNAの損傷にいかに細胞はレスポンスするか、講演時のこころがまえ

フィンランドもノルウエーもそれぞれの国の言葉があり、見てもぜんぜんわかりません。真剣になってじーっとみていると、一つか二つ分かるような気がする単語もあります。大学での第二外国語がフランス語で、ドイツ語をまったく勉強しなかったのは残念でした。ヨーロッパの北の方の言葉に知識がありません。
オスロ郊外ホルメンコーレンという聞いたことのある場所での会合です。外にでればスキージャンプ会場が見えるのではないでしょうか。山裾にホテルは建っています。昨夜着いて、暗かったのでまだ外の様子はわかりません。時差の関係と会議にでたら座りきっりですので、こちらの朝の時間に投稿するようにします。
疲れていたのと外は暗いし雨だったのでやることもなく早く寝てしまいました。それで日本なら寝坊の時間、こちらはまだ深夜の時間におきてしまってます。これからゆっくりバスにでもつかってみるかとおもっています。日本から日本茶、中国茶をもってきました。それにヘルシンキの空港でコーヒーを買いましたので、部屋でおいしい飲み物をゆっくりのめるのはいいです。前回のコペンハーゲンと異なり、この部屋にはお湯のわくポットがありいます。しかし、カップが小さいのが難点です。

今回の会合はゲノムDNAの損傷にいかに細胞はレスポンスするかというテーマです。つまり、損傷DNAの修復のメカニズムを、がんや病気の発生とからめて考えようというものです。わたくしは、ずっと傍流的にこの問題を取り扱ってきました。理由はゲノムの伝達がわたくしの主たるテーマですが、損傷した染色体DNAがいかなるあつかいを細胞から受けるか、常に関心は持ってきました。そのせいか、そのキープレヤーが、実はゲノム損傷にも重要な役割をする、という事実を示してきたのです。コンデンシンとかセキュリン、セパレースと同業者達がよぶ重要なゲノム伝達の立役者が、じつは損傷修復にも働いているというのは、わたくしたちのグループの数年前に発表した、この分野での貢献でした。ゲノム損傷の研究者は世界中で沢山いますが、このオスロでは4人のオーガナイザーが分裂酵母という微生物に絞ってこの問題を論じようというものです。
プログラムを見ると、ほとんどの関係者が集まって来てますので、みっちり数日間議論できるでしょう。わたくしは、今晩のレセプションの後で一時間講演します。昔の話でなく、いまの新しい進行中の、論文が印刷中とかまだ書いてもないデータをまとめて話したいと思います。内容的には沖縄でG0ユニットの研究が大部分です。今回準備中にかんじたことは、沖縄の研究は3年半でよくここまできたものだと、メンバーの献身的な努力に感じ入った次第です。

講演は新規のデータを内容豊富に含むのもいいのですが、やはり、なるほどそうか、とおもう「新規概念の提出」が大切だといつも思っています。しかし、聴衆と講演者には知識において大きなギャップがあるので、講演者がこれはとてもいいあたらしい概念でしょ、と得意げにいっても、聴衆はきょとんと、としていることが案外多いものです。気をつけないといけない点です。つまり興奮している研究者本人の興奮の理由は意外に伝わらないのです。
しかし、今回は、参加者が大半が同業者ですから、なにが新しいデータかはすぐわかってもらえます。新しいモデルを出せば、逆にきびしい反論もありえます。
同業者であるがゆえに、それまでに分かったとされた知識やでーたについて、根本的なとらえかたが思いのほか違うことがあるのです。このあたりが、ある意味、研究をするうえでいちばんスリリングなのです。人間的な要因もありますし。
若い頃から、食事やアルコールを共に、一番議論を闘わせてきたのは既に存在するデータの解釈でした。その解釈次第で、今やってることも、これからやることも、その価値が著しく異なってくることでした。わたくしは、実生活はそういうことはありませんが、学問的には孤高を目指してきました。自分がおもしろいとおもっても他人がそう感じてないことがわかると、勇気百倍したのが若い頃のいつものパターンでした。ひらたくいうと、へそまがりということです。
しかしいまは年寄りですから、まあまあいいじゃないですか、とたいていはすましていってます。それに、みんなが理解し合うことも大切という、つきあいやすい人間になってきたはずです。すくなくとも自分の側は。それで、講演のあとの議論をに大切にしたいこころづもりです。
なるべく質問がでるように講演は工夫したいとおもっています。今回は、その結果がどうでるか、興味があります。

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