「赤福」に無期限営業禁止命令,ワトソン博士の物議をかもす人種差別発言

三重県知事の「まったく同情の余地のない」という発言がでてきて、「赤福」は営業禁止となりました。店頭で売れ残った商品をふたたびなにか処理して再販売していたことが分かったためです。知事は、「赤福が立ち直って再び事業展開を考えるならば、真実の情報を最初から明らかにしていくべきだった」と述べたとのことですが、だれでも同意するでしょう。うなだれきった社長さんの写真も出ていました。それだけは絶対無いと、言い張っていたのに、内部告発ではしっかりそこまでやっていることが、知らされていたようですから、「ひどく甘い」と言われてもしかたないでしょう。赤福はお菓子というより、なにか「リサイクル資源」のようなあつかいをこの会社ではしていたようです。これじゃ、会社はつぶれちゃうかもしれません。これからの内部告発者は、この会社はつぶれるべきだと、確信して告発してくるものと、経営にたずさわる人間は考えて経営すべき時代なのかもしれません。告発がひとたびでたら、あとはルールにのっとって判断が示されるのが、行政や警察の行為になることも明らかです。手加減すれば、した人間の首がとぶはずです。

米国の著名な分子生物学者、DNA二重らせんの発見者ジエームス・ワトソン博士の人種差別発言がかなりおおきなニュースになっています。博士は非常に広く知られたかたでわたくしもかつてはなんどもあって話したことがあります。しかし最近はありません。昔から歯に衣着せぬ発言がありましたが、今回のは大変具合が悪いです。
ロンドンのサンデータイムスにでたインタビュー記事で、以下のように発言したといわれます。

アフリカの将来はどうしょうもなくくらい、なぜならわれわれの社会政策はかれら黒人の知性(インテリジェンス)はわれわれのとおなじという前提に立っているからだ。しかし、すべてのテストがそうでないことを示している。

すべての人間がおなじだという考えは当然だとおもうが、しかし黒人の被雇用者とつきあった誰でもが、それは真実でないと考える。

ひとびとは肌の色で差別されるべきでない、なぜなら有色人種でも才能ある人間は沢山いるのだから。

このような記事がでたことによって、ロンドンの科学博物館は博士の講演会を急遽とりやめた、との記事もでています。博士は新著のプロモーションでロンドンに来て、マスコミ関係者とのインタビューがあったとのことです。
タイムズはインタビューは録音されているのでひと言もれなく正確に報道されていると言う声明が出たそうなのでこういう事はいわなかった、ということはありえないようです。
ワトソン博士はこの大変な反響に大変遺憾に思っている、と述べたようです。そのうえで、本当に申し訳ない、と謝罪もしています。しかし、そのような事をいったことは否定していません。
ちょっとうまく訳せないのですが、
I cannnot understand how I could have said what I am quoted as having said.
と言ってます。つまり、そんなふうに言ったと引用されたようなことをどうして自分が言えたのかまったく分からない、と言ってます。
博士は年齢も79才ですから、知的な衰えがあったと自ら告白したのかもしれません。しかし、言い訳にはならないでしょう。こころの奥にあった残滓のような人種偏見のようなものが、出たのでしょうか。

氏の発言を、論外けしからんと切って捨てるのは簡単ですが、わたくしはもうすこし粘ってこの発言を考えたく思います。
生物学、遺伝学の世界の権威がなぜそのような発言をしたのでしょうか。黒人の人がこの記事を読んだら悲しみ怒る人が沢山いてなんら不思議はありません。それを分かって発言したのなら、愚か無思慮と言わざるをえません。
人種間に生物的に違いがあることははっきりしています。まさに肌の色がちがうのです。スポーツ、芸術、科学のような世界ではなんらかの差が人種間でありそうなことはこれもある程度予想されます。しかし、それを優劣と考えだしたら、大きな問題が発生します。違いと優劣はまったく別個のものです。知性をどう定義するかによって、優劣などいくらでも基準がかわります。結局、優劣という思考形態をもつかぎり、かならずワトソン博士のような発言に行き着いてしまうとおもいます。
日本人もこのような問題に無縁どころか、非常に関係があります。日本社会にも優劣ですべてを論じる流れがあります。しかし幸いなことに違いを大切にする文化も強く残っています。みんな同じという考えは奥底に優劣の差別感を助長しがちです。わたくしは、違いがあるけれども、違いの優劣を論じるのはほとんど意味がない、と思いたい人間です。
しかし、ワトソン博士の若いときからの闊達なものいいを知っているわたくしにとって、これから博士はどうするのか、どう発言して社会と折り合っていくのか、不安の念で見ていくことになるのでしょう。米国の生命科学者も難しい問題をかかえて困るでしょう。弁護もできないし、しかしいっぽうで米国最高の生命科学者をこの発言で抹殺できるでしょうか。

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