生き物というものの特技はわずかな微小な刺激でも、それを増幅することです。
増幅した後に生き物は働きを変えたり行動したりします。
細胞のなかでの出来事でも、小さなわずかな刺激でも大きく増幅出来ます。その仕組みを見ると、なるほどと感心できます。
たとえば、DNAに損傷が起きたとしましょう。たった一カ所の損傷でも、ほっておいたら細胞にとって大変具合が悪いことが起きうるのです。そういうとき、何十億や何千万もあるDNAの塩基対のたった一カ所でも、まずそれを認識するセンサーのような分子があります。それが活性化します。
このセンサーはまだごく少数ですが、DNAが損傷したという情報を細胞内に広める情報増幅活性のある分子に伝えます。
そこで一挙に情報はタンパク質をリン酸化するような作用で、一群のDNA修復作用のある分子、そしてここが大切なのですが、細胞分裂サイクルをおこす因子の活性をことごとく阻害してしまいます。
ですから、ここでは分子的にはたった一カ所のDNA損傷が、何十万何百万の細胞分裂サイクル因子の阻害可能なまでに増幅してその結果細胞分裂が止まってしまうのです。
それで、細胞はDNA損傷修復が終わるまで、分裂しないので、損傷染色体DNAは子孫に伝わらないのです。
この情報増幅のしくみには様々な側面があるのですが、ごくおおざっぱにいえば損傷、センサーのあとに情報がふたつに分かれて、ひとつは修復にもう一つは分裂抑制に回ります。この間に情報の大幅な増幅があるわけです。
こんなことを書いたのも、検察や警察が犯罪者(とおもわる被疑者)を発見して逮捕しても、マスコミがなければ、世の中に伝わらないわけで、彼等をセンサーとすれば、マスコミが増幅因子となり社会を動かし、変えることになるわけです。どっちが重要というよりも、どちらもおなじくらい、もしくは増幅因子がより重要かもしれません。一体化していると考えるのでしょうか。
センサーが誤れば、増幅因子は動きません。増幅因子が動かなければ、傷は認識されても、その情報が増幅されないので、傷が残存したままに細胞分裂に向かってしまいます。これをそのまま検察とマスコミのアナロジーに適用するのは無理ですが、しかし、これらが一体化すれば社会をどうにでも動かせるわけですから、誤作動すれば、社会にとって大変に危険になりうるセットです。
わたくしがこのブログで繰り返し、述べているのは誤作動のうち大マスコミの誤作動、意図的な誤った(結果として)情報の増幅くらい社会にとって危険なものはない、社会にとってもっとも反逆的な行為だということです。
研究者的発想としては、特定の検察関係者と特定のマスコミ関係者が情報を実際に伝播する現場をつかまえて、それを詳しく吟味することが社会にとって最も大切なことだと思うのです。ここが暗黒だと、社会の根幹が壊れてしまうと思うのです。
民主党の一部はここまで探求しようという気があるようですが、本気ならぜひともピンポイントで動かせぬ証拠を発見して、それをカウンター情報として、大マスコミの所持する増幅の仕組みに乗せなければ、小沢代表は汚名をきたまま早晩退陣の圧力に負けざるを得ないでしょう。小沢氏の近くにいる人達が彼が真に日本の未来にとって欠くべからざる人物だと信じるのなら、検察情報がいかにして大々的に増幅されるのか、実名をあげてその仕組みを明らかにする必要があるのではないでしょうか。
しかし、つくづくおもうのですが日本社会にはいろいろ不可解な人物がいるものです。立花隆氏などいつも政治評論で正論をいって、勝ち組に乗りますが、この人がただの一度も検察批判などしたことを聞いたことがありません。本当のところどういう人物なのでしょうか。自分のことをさわやかなんとかと自称する堀田という元検察の人も、検察には説明責任などまったくない、とかこのあいだ書いていました。でもわたくしが一番知りたいのは、大マスコミの情報増幅担当者、でこのような人物たちの実像はどのようなもので、どのような手口なのかそれを知りたいものです。たぶん知ったら、本当にガッカリするくらい単純なのではないかというおそれはあるのですが。
むかし、児玉誉士夫という右翼というか大物フィクサーがいまして、戦後の政治の暗黒的部分では常に顔を出していました。長年にわたってロッキードの代理人だったと言われています。晩年はみじめなことになったのは、かれが戦後一貫して米国CIAの協力者であることが公知の事実として判明したからでしょうか。CIAからもお金をもらっていたとかで、互いに持ちつ持たれつだったようです。どっちもどっちですが、CIAでは協力者としては、最低クラスの評価であったとか。
かたちを変えて日本ではいろんなエイジェントが政治とかには沢山いるに違いありません。