連休中の家族、エピジェネティックな世の中

この連休、出歩かないで家の周辺で時間を過ごす人たちが多いのではないでしょうか。いっぽうで、1000円とかいう高速道路をできるだけ使ってという外出人たちも多いのではないでしょうか。外出組は相対的に若くて、家周辺組は相対的に年齢が高い、とこう勝手に推測しました。わたくしの家族もそうです。
連休中に滋賀県以外に出ていませんが、不満もありません。
娘家族や、息子家族も申し訳ありませんが、来てくれますし。

連休が明けるとすぐ、ヨーロッパ行きで、講演がふたつあるので、準備しています。やはりこのあいだの中国とはかなり変えているというか、最新の未発表データもかなりいれて話して見たいと思います。
やはり未発表部分があると、反響がそこはかとなく、分かりますので、それでこれからの研究の進め方もかわるのです。どこまでしゃべるか、間違ったことはしゃべりたくないし、いっぽうでつまらないとも思われたくないし、さらに発表が何年も先になってしまうような未熟状態のデータはたとえ面白そうでもはた迷惑かもしれませんので、バランスが難しいのです。

エピというのはギリシア語源で上(upon)、そば(near to)、外(in addition to)とかいう意味のようでして、epigeneticsという言葉、最近の流行語は、遺伝学の上、そば、外というような意味で日本語訳は無いと思います。かたかなでエピジェネティックスとか書く人が多いでしょう。
おおざっぱにいえば、メンデル遺伝学では一見説明できない、DNAの配列の変化がないのに、遺伝現象として観察される、こんなことをひとまとめにしていう言葉です。
いまの生物学の最前線の一つであることは間違いありません。
このあいだ聞いた、理研の石井さんの大変興味深い成果もまさにエピジェネティックスな分野の研究でした。
下等な生物よりは高等な生物で多数見いだされていたのですが、だんだん下等なものでも見つかって、モデル系で精密な研究が出来ますので、その仕組みが徐々にわかりつつあります。
今回はそういうはなしを沢山聞けるものと思います。訪問する、研究所のひとつのスローガン自体がエピジェネティックスということのようです。

後天的に刷り込まれたものが、ほとんど遺伝子状態になってしまう。DNAの配列には変化が無いので、クロマチンと呼ばれるタンパク質の部分の変化が「後天的刷り込み」の原因となり、その刷り込みは一生続く。さらには子どもにまで遺伝する、何代も続いてしまう。
獲得形質の遺伝とか、かつて悪の権化とかいわれたルイセンコ学説なども、このような研究の流れの発展で、説明出来るようになるのかもしれません。
あまり専門的なことを書くとわたくしも時間がとられて疲れるのでやめておきますが、生物学にとってはとても挑戦的な時代を迎えつつあると思います。
しかし、いっぽうで世の中の森羅万象をみていると、エピジェネティックなことが多すぎて疲れます。幼児の原体験なんていうのは可愛らしいのですが、70才過ぎの政治家が固定観念だけでしゃべっているのをきいていると、やはり聞きたくない、と感じます。
エピジェネティックスは身につまされる遺伝学になるでしょう。

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