昨夜家に帰って、ことしの受賞者達が誰かわかりました。
Elizabeth Blackburn, Jack Szostak, Carol Greiderさんたちの三人です。
三人ともよく知っているかた達でした。Blackburn,Szostakさんは1982年頃に初めて発表をききました。その時の感動を思いだしました。
原生動物のなかには変わり者が多くて、大核と小核と核がふたつあるのですが、大きい方の核には染色体でなくて短いDNAが沢山詰まっています。遺伝子サイズのDNAというのですが、その末端がどうなっているのか、これを研究した動機はいろいろあるのでしょうが、知的好奇心は当然として、一つは人工染色体を作ろう、そのためには動原体DNAというものと、末端のテロメアDNAが必要だろう、それでこの末端DNAを利用して操作しましょうということがあったのでした。最初聞いたときには、感動ばかりでなく、なんて頭がいいのだろう、感心したものです。いま思えばその27年前の発表がこの分野の進歩の原動力であることは間違いありません。Carol GreiderさんはBlackburnさんのお弟子さんでテロメラーゼというものがこの染色体末端を作るのに必要というこれも素晴らしい発見をされたのでした。気取らない方で、赤ちゃんを背中にしょって発表したのを見た記憶があります。ずいぶん昔のことですが。
さっきお三方にお祝いのメールを送りました。
昔は、染色体のひとたちはみな一同に集まって話を聞けたのですが、テロメアが寿命に関わるといいうことになってからえらくセクシーな分野になってしまって、わたくしのように地味に動原体をやってるものは一緒でなくなりました。
でもBlackburnさんには慶応医学賞を取られたときに、お会いした記憶があります。彼女の夫君のJohn Sedatさんは折々にあうことがあるし、わたくしのところの出身の平岡君や宇澤君がおせわになったこともありますから、学流はたいへん近いのです。
Szostakさんともいちどは論文を一緒に発表しています。1987年の頃です。今京大にいる松本君の学生時代の頃の論文でした。昔研究室にお邪魔しました。いつの頃だったのでしょう。まだAndrew Murrayさんが大学院生でいたのでしょうか。
今年は三人とも米国人とか書いてありましたが、Blackburnさんはれっきとしたオーストラリアの方で、たしかタスマニアで育ったはずです。オーストラリアではナショナルな存在と聞いています。Szostakさんも英国で生まれているはずです。今年はお二人が女性で珍しいのですが、でもこの染色体末端テロメアは女性が強いので昔から有名でした。他にもZakianさんとかde Langeさんとかすごいものです。話がそれますが、面白いことに精子形成の分野は女性が強くて卵形性は男性が多いのです。
ともあれ今年も日本人は医学生理学賞には縁が無かったのですが、将来はまちがいなくあるに違いありません。そう思わざるをえません。本当のところこのお三方の名前はノーベル賞候補者として何度も聞いたことがあります。沢山ある、選択肢のうちのひとつが今年は選ばれたのです。業績はたいへん基礎的ですがポテンシャルとして深い医学的意義があるということなのでしょうか。