けさ無事ワークショップ終わりました。
充実した日々でした。オーガナイザーとはいえなにもかもやってもらっていました。申し訳ない。
参加したみなさんも大変喜んでいました。
ラボメンバーが大奮闘のおかげです。
昨日は午後に琉球村と新キャンパスに行きました。琉球村おもったよるずっと良かったでした。昔からの沖縄の家が移築保存されています。新キャンパスもいよいよ姿を現してきて、来年のラボの移動が現実感となりました。
あさ空港への車中で京大のAさんといろいろ雑談をしまして、啓発されました。昨今の京大のようすとか、昔のわたくしの古巣の学部というのか研究科の様子も知りました。目に浮かぶようです。
いま空港でまもなく飛行機に乗ります。
もうすこし書きたいことがあったので、あとでまた投稿したいとおもいます。
多くの基礎生命科学者にとって今の日本の現状、「世も末」としかいいようのない感情に支配されているでしょう。日本を代表するような研究者の多くが来年の研究費はどうなるのかわからない、という非常につらい状況に立たされるという「現場の様子」は世間にまったく伝わってないのです。もともと自民の悪政で、応用偏重の傾向は年と共に激しくなっていました。基礎研究者の窮状はいま伝わっても同情もなく、政治家からマスコミまで「あなたの研究者としての国民への説明が足りないのです」といわれてしまうのですね。
厭世的なため息しかでないでしょう。スパコン一台の議論ばかりで、それさせ救えば日本がなんとかなる、と勘違いした議論が横行しています。世界一をめざさない研究はまるで価値がないかのような議論もほんとうに困ったものです。研究者はおおくはほんとに謙虚です。この謎を解き明かしたい、この技術をなんとか発展させたい、と一生懸命なのです。税金もどちらかといえばおそるおそる使わせていただく、そういう気持をもつ人達が多いでしょう。
日本の国防をになう自衛隊員は世界一の国防のために頑張っているのではないでしょう。まさに「お国のために、国を守るために」フツーに頑張っているのでしょう。それでいいじゃないのでしょうか。
基礎科学者の多くも、特にわたくしたちの世代などは、お国のために生涯フツーに頑張ってきたつもりでした。それが、世界一になろうとしないのは駄目なヤツ、自分のやってることの必要性の説明が下手だからあんたもういらない、消えろ、お払い箱といわれたら、どうなのでしょうか。
フツーの国防もいらない、フツーの世界レベルの基礎科学もいらない、こういうことになると感じるのですね。しかも、国民を代表すると称するマスコミがこの政治家のぶった切り作戦をただただ賞賛とするとなると、基礎科学者、特に個人の創意で頑張っている研究者たちは社会からほんとに疎外されてしまったと思うでしょう。
さらに来年の研究費はいまやがた減りが予想されています。新規に応募した研究費も採択される可能性も低いのです。献身的にはたらくポスドクに払う給与は来年三月で尽きてしまう。お先真っ暗。これが今回の研究会で、毎年のようにNature, Scienceに論文を発表している、日本の宝とも言えるようなすばらしい研究をやっている主宰者の多くから聞こえてきた実情なのです。これが現場の実情ということをどれだけの人が知っているのか。わたくしも本当をいえばここまでのひどい状況とは思っていませんでした。みな日本人の特性として最後最後の窮状にいたるまでなにもいわないのです。日本の自殺者が毎年3万人を越えるというのもそのあたりの控えめな日本人の特性が原因の一つであるに違いありません。
悪いことは重なるので、負のフィードバックですが、そういう様子を見た目先の利く若者は決して大学院博士課程などに近寄ろうとしないようになります。研究の現場の空洞化です。これも博士号をとるのはあなた本人の勝手でしょ、自己利益のために学位が欲しいのでしょ、ということで奨学金は利子をつけて返しなさいよ、学問なんていうのはすべて、自己利益なのですから。これが自民・官僚連合がやったことで、民主党は政治家主導でこれをさらに一段と悪化しようとしている。これが今の状況です。学術会議を筆頭に無益な組織しかもたない基礎科学者の孤立感はますます深まります。
これまでは、官僚に向かった憎悪がまもなく政治家に向かう、これがいまの研究者達の実情でしょう。そしてせめてと期待した世間からも冷たい意見しかこない、どうすればいいのか。基礎科学者にとって本格的な冬の時代がきたとおもわれます。
山中先生には悪いのですが、彼の大発見と現在の頑張りはわたくしももちろん評価しますが、彼の研究の周辺、一点に集中した応用研究投資の弊害は相当に目立って来ていると思われます。研究の面でもわたくしからみたらペテン師的な言動が目立って増えてきているのではないでしょうか。虎の威を借りる、というような表現が適切なものが横行し、未来を担う、若い研究者にたいしても非常に悪いシグナルが出だしている、とこう率直に思います。さらに、研究投資が視野狭窄であり、5年先、10年先をみてない応用偏重研究投資が極端で、あまりいい未来像は見えません。
孤立感を深める現役の基礎生命科学者たち、そして応用偏重にしか未来がみえない若者たち、かれらになんとか役立つようなことをしたい。わたくしとしては伊達に年を取ってきたつもりは無いので、知恵を絞って打開策を考えたいと思います。
窮状にある基礎研究者にとって、だれが味方になってくれるのか、味方探しがいちばん大切でしょう。たぶんいちばんの味方は海外の研究者でしょう。
こんどの海外からの参加者たちは一様に日本側の発表の水準の高さ、素晴らしさを賞賛していました。正直な気持ちから出ていたことはまちがいありません。
すくなくとも、かれらは味方になってくれるに違いありません。研究者の気持ちの中にある国境の無い部分で、心から応援してくれるにちがいありません。