そういえば日曜には早めに比良の家を出て信楽の奥にあるミホミュージアムの伊藤若冲展を見たのでした。同時代にはどうみられていたか、たぶん他に沢山いる画家のなかでちょっと変わった人という認識だったのでしょうか。蕪村や大雅や応挙とはもちろん格が違うというのだったのでしょうか。でも200年も経つと、彼のほうが時代に負けない、普遍性があったことにも気がつきました。ただ紹介文にあったオタクというのはまったくピンと来ません。むしろ豪快な道楽者という感がしました。鶏の表情など凄いものです。啖呵をきってるような鶏の表情は見ているうちに愉快になりました。メインの鯨と巨象の大きなのも男性的なパワーがありかつ滑稽感もあり、またなんか達観した超越感もあり、宇宙的という表現をしてもいいのでしょうか。今回はこのミュージアムの持ち主である宗教団体をなんとなくうさんくさく感じる経験をしました。つまりいったいどこからこのすごい金力がでてくるのだろうか、無チェックでいていいのだろうか、という疑問です。
なお、この展覧会を見る前に有楽である作家さんのうずくまるを買ってしまいました。しばらく愛玩的に毎日見ようと思っています。
わたくしは経済にも財政にも弱いのですが、人生の中で、ほんとうは凄く強くなれる契機がなんどかあったのになぜかそういうものを受けつける能力というか感が乏しいのだったと思います。
たぶんその原因は子どもの頃に母親から、お金のあつかいがぞんざいといわれて、大人になったらお金に苦労するとよく叱られたからだと思うのです。それで孫には貯金箱をよくプレゼントしています。わたくしの子供心にお金をけちけちするよりお金を儲けることを考えた方が意義がある、つまり財政より経済が大切という感覚があったのですが、それをいうとこっぴどく叱られるので、お金のことはなるべく考えないようにしていたからでしょう。
山科で家族3人ですごし始めたときに、アパートの隣室に同世代のやはり3人家族がおられました。ご主人と始めて廊下で会ったときにおたがい何の商売のひとだろうと、互いに値踏みをするような目つきをしたような記憶があります。すぐわかったことは、経済学者佐和先生だということでした。当時は新進でしたが、のちに極めて著名なかたとなり、長年京大経済学の顔でもありました。最近滋賀大の学長になられたことを新聞で知りました。ただ、これ30代前半の頃です。わたくしの娘や後には息子も先生のお宅を自分の家のように出入りするようになりました。娘は佐和先生の奥さんにかわいがられて、だだをこね出すとすぐにしんちゃんかあちゃんと泣き出して隣家に行きたがったものです。佐和先生には通勤時にお会いして、おりおりに経済のレクチャーを受けたのに、ほんとに素養になりませんでした。佐和先生はそのご越されてしまったので教育を受ける機会を失いました。
もっと前の20代の終わりというかその頃すんでいたボルチモアのアパートの傍にあったハンバーガー店で人なつこい感じの日本からの留学生青年が寄ってきて話しかけてこられました。それがやはり後に京大の経済の教授となった橘木さんでした。よく雑談をしたものでしたが、経済のはなしはわたくしの頭のどこにも残っていません。10年以上も経ってとつぜん彼が京大の先生になられたことを知り、しかも湖西線に家を構えていることがわかり、通勤の往復でよくレクチュアーを受けたものです。でもかれが日本には貧乏な人が多いのだということを本に書いたりあちこちのテレビ番組に出てしゃべるのを聞いて、なんとなくなるほどと思ったものですが、これが学問的理解でないことは明らかです。いまは定年で同志社に移られてしまって会えなくなったのが残念です。
もうおひとりは経済学の泰斗である宇澤大先生です。なんと先生の子息がわたくしのラボの大学院生だったのです。わたくしは父兄ということもあるので先生に何度かお会いしました。わたくしが学士院の賞をいただいたときにもたいへん喜んで頂きました。しかしながら、経済学のレクチュアーを個人的に受ける機会を逃してきました。機会はあったのですが、父兄の方といっしょに飲食をしない、と決めていましたので、いまから思うとくだらない自己規則だったようにもおもいますが、ともあれどの院生のおやごさんとも例外無しにやって来たものでした。それで機会を持ちませんでした。
もうひとり経済学部の先生である下谷先生もよく知っています。でもお会いするとカタカナの歴史の話が多くて経済の話はほとんどありませんでした。こちらは随分啓発されました。
ということですごい先生方を個人的に知りながら、経済学を知ることなくこの年まで来てしましました。でも経済学者はかなり知っているつもりです。これらのかたがたが典型的では全くないような気もしますがしかし皆さん大変親しみやすく、人間的でいらっしゃる。法学部の先生方とはぜんぜん違うのですね。
そういうことで、わたくしのような経済に疎い人間がいまの民主党の経済施策を実行しているのではないかという疑いを持っているのです。しかもけちけち大好きというような人達が。自信満々の亀井大臣を抑止できるひともいないようですし。