日本の若者は海外に行かなくなった内向きになったなどといわれますが、特に彼等を弁護する気はありませんが、でもそれにはちゃんと理由があるのです。彼等も行かざるを得なかったら行くでしょうに。
それなのに中国や韓国の若者は大挙して米国にいくと言われています。
わたくしは益川さんのような存在がそのような疑問に答えを出していると思うのです。
益川さんは完全にメードインジャパンの研究者です。
名古屋の坂田先生のところで理論物理をまなび博士号もとり、当時の南部陽一郎先生にあこがれて、非常に尊敬していたと言っております。もちろん理論物理では湯川先生、朝永先生と素晴らしい先生もおられたわけです。そのような環境下というか影響下で、名古屋で切磋琢磨して学問をして、すばらしい業績を小林先生と共同研究でなし遂げてしまった、こういうことでした。
益川先生がノーベル賞をとられたときに、先生が海外に行かれたことがないということが話題になりました。こういうことも含め、日本人は益川先生が日本の歴史が続く限り記憶されるべき人物だと思います。つまり日本の科学が自前の科学になった最初の完全証拠といえましょうか。もちろん益川先生が多数の海外の論文を読んだことは間違いないでしょう、でも別に海外留学などしなくてもそれだけの研究をしてしまう基礎力が日本の科学にはあった(現在形にしたいのですが)、ということです。
わたくしは分子生物がにあこがれたので当時の日本ではまだ基盤が薄くそこまでの影響はありませんでしたが、それでも学部生時代にも野村先生とか富澤先生ような人達が活躍していると聞いて、日本人でもできる学問だろうと思ったものです。
それから50年近く経った今の日本の生命科学の環境なら、別に海外にいかなくたって、向こうの人と付き合わなくたって、英語が堪能でなくとも、益川さんのようにノーベル賞をもらえるような日本の若者がでてもわたくしはそれほどは驚きません。
自前の生命科学の水準は驚くほど高いのです。
ただ益川さんのようになるには、やはり素晴らしい問題を見つけて、自分で解いてしまうことなのでしょうね。理論物理と異なって実験科学では何かを解くには時間や経費がかかります。生命科学でも理論的な分野はないわけでもないので、まずそういうあたりから日本人の若者が彗星のように現れて来ないものでしょうかね。