旧暦正月の二日目ですが、温暖な日です。
薄着でも充分という感じです。
アラバマ大学での事件はもちろん気になります。
新聞では教授とありますが、たぶん準教授クラスと思われます。なぜなら、この女性研究者の職が保証されるかどうかtenure制といいますが、この人はその評価にかかっていて、結果はtenureは認められないということが決まりそれを報告した大学内での会合での血なまぐさい銃撃事件だということです。死亡したのは、この研究者の所属する組織のトップとそれに準ずるひとたち3人ということですから、かつて聞いたことのないショッキングな出来事です。新聞では夫もこの事件に関わっていて、ふたりとも警察に身柄拘束されたということです。
猟奇的な事件という興味ではなく、いったいなぜそのような行動というか殺人行為にこの研究者は及んでしまったのか。その原因をしりたいということです。
直感的には「怒り」によるものであろう、そうでなければここまで激しい行動をとるはずがない、と推測します。理性の府の研究者が殺人事件を起こせば自分も完全に破滅するわけですから、とんでもないほどの巨大な怒りを覚えたと推理します。どうしてそんなに怒りが激しくなるのか、わかりませんが、なにか外的な理由があるのかそれとも内的な理由があるのか。内的な理由とは、日本であった、厚生次官やその家族達を殺傷した犯人のような場合です。かれはいまもまったく悪びれもせずに、何度生まれ変わっても同じような復讐のための(かれのかつてのペットのための)襲撃を行うと宣言しているような、周囲には理解不能でも本人にははっきり実感できる強烈な内的怒りがあるらしい、そんな意味です。
実際研究者がtenureに失敗して大学や研究機関をお払い箱になったらどうなるか、かなり厳しいものがあります。わたくしの知り合いでもホームレスになってしまうかも、と真顔で心配していたのを思いだします。もちろんポスドクならそのような不安を常時感じていても不思議ではありません。わたくしの知り合いの、世界的に一級の業績をあげた研究者が米国の職の不安定さに嫌気がさして欧州に移ったときに、月給がさがろうが何だろうが、この不安感にさいなまされるのはたまらないから、移ることに決心したといっていたのを思いだします。移ってから非常に研究成果が上がりだしたのは事実ですから、こういう類の不安要因はなにもプラスの意味がない、マイナスばかり、というわたくしなりの推論にはあいます。
そのような不安な心理状況はそう簡単に暴力を引き起こす怒りに代わるものではないでしょう。
だから例外的な事件とみるのが普通でしょう。
しかしこういう事件はかつて聞いたことが無いがゆえに、これからまたあるかもしれない先駆的な、アカデミズムにおける凶悪な事件とも考えられます。米国であったことは日本では10年後にかならずあるという、言いつたえを信じれば日本でも同じような事件があっても不思議はないとも思えます。そのうち詳しい報道や解説が出るでしょう。この研究者はハーバード大学からこの米国でもかなりディープなアラバマ大学にきていたので、そのあたりも何かあるのかもしれません。また研究分野も神経生物学とか神経化学の人気というか競争の激しい分野です。決定的な業績がでないと、なかなか評価がさだまりにくい神経分野ですから、評価についての本人と周囲の違いが非常に大きくなる可能性もあるでしょう。