来訪者のかたがた、分からないからしばらくやめる

きょうは良い天気。海の眺めもきれいです。ラボまでてくてく50分。
ひさしぶりに歩いたような気分でした。

色んな来訪者がこの建物にはあるようです。
これまでわたくしは極力時間節約で関わりを持ってませんでしたが、いまはガイドさんたちも遠慮なく来てしまいますから。
きのうは大昔に研究費をもらったことのある財団をもっている薬品会社の会長さん。いまは目薬がしゅたるものなのかな。これは昼飯時にサロンで会いました。動物園の動物みたいなものです。
きょうは発生生物学会の参加者たち。別にわたくしどもの研究室に訪問に来るのでなく、あちこちみていくのでそれにぶつかるだけです。きょうのには神戸のCDBのAさんが来てました。
みなさん口には出しませんが、こんな不便なところでようやるね、と顔に書いてあります。
あしたは、バーゼルから、SGさん。阪大に滞在しているので、ついでに来てもらってセミナーをしてもらいます。わたくしがこちらに住民票を移してから最初のセミナーのお客さんでしょうか。

ふたつの長い書類書きが一段落、でちょっとホッとしています。ラボメンバーともあまりしゃべる時間もここのところありませんでした。

放射能が体に及ぼす影響ですが、チェルノブイリで頻度高くあるのとおなじような癌が生じるとは限りません。
生体のDNAは損傷を受けても大抵は修復されるし、修復されないでいると死んでしまうので、そう簡単には難しい病気になるわけではありません。
ただ放射線に応じてできるDNAの傷の種類が色々多様で、また修復もエラーの起きがちなものやほとんど起きないものなど非常に種類が多いのです。
とくにわからないのが、長い時間のかかる健康障害です。それと個人差です。低い頻度ですが、紫外線に極力あたらないようにと医師に言われるような病気を持っている人たちがおられます。
ですから分からない要因が多いのですが、でもそうは言いながらはっきりしてるものもあります。確率の世界とはいえ、喫煙と癌の関係を疑う科学者も医師もいないでしょう。
X線照射などのDNA損傷と癌発生増加の可能性を疑う人もいないでしょう。
原発特に今回のように低温で空気中や地中や海に拡散していくものの効果というのは放射能の組成とか、未知のことが沢山あるでしょう。さらに体内に入って被爆すると一段と分からない要因が増えます。いわんや一才の子供がこれから90年も生きるとして分からないことは沢山あるのです。いたずらに恐がる必要もない一方で、甘く見ることくらい危険なことはありません。
いちばん頼りになるのは数日前に書きました、誠実に篤実に事実をきちんと集め、知りうる専門知識を駆使し、慎重に言葉を選んで発言する良心的な科学者、研究者です。彼等の言葉です。ぜひ、耳をすまして聞いてください。
でも決めるのは、ご自身になるのです。
外国の人たちが日本に来なくなったのは決して情報が間違っているからでなく、わからないからとりあえずしばらくやめるということでしょう。誰だってそういう態度をよくとるものです。
自分が当事者になると急に自分の周辺が見えなくなるものです。
そういうことは沢山あるのです。
だいたい地震はたいへんこわいものです。地震の経験のないひとには特別怖いでしょう。
津波はひとたび被害にあえば地震などは問題にならないくらいのとてつもなく大きな被害です。
この怖さが日本では文書としてあまり継承されてこなかったのは不思議です。被害を受けた場所が中央でなかったからなのかもしれません。
こんどこそ、と多くの日本人はいまおもっているでしょうが。でも原発問題のほうは国民的議論が起こらないのが不思議です。

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