わたくしもこの4月から沖縄に住居を移しましたので、なにか自分の研究が県のための役に立つことができないかと考えております。とりあえずは共同研究などを通じて知識と体験を増やしてそこから役立つことを見いだしたいと思っているのです。
研究の流れからいうと、やはりメタボリックシンドローム、つまり肥満や糖尿病などの代謝症候群にかかわるものです。2,3の大学の医系の研究者との共同研究を通じてわりあい本格的にかかわって来ています。
沖縄のメタボ病というのはかなり深刻といって過言でありません。一方で百才以上のかたたち百寿者もたくさんおられるので、健康長寿のシンボル県とも言えるので、ある意味日本のもっとも先進的な県とも言えるのです。メタボ病の増大については、西欧的な食生活が戦後早く上陸しこれが定着したためとも考えられており、また運動不足もあいまってか、統計的に2005年のものでは糖尿病も肝臓疾患も全国で男女とも最悪の値を出しています。一方で平均寿命も男女の差が沖縄がいちばん大きいのです。つまり沖縄男性は危機的状況なのです。女性の平均寿命は2005年のデータで日本一長いのですが男性はずっと下になってしまいました。2010年のデータはまだ発表されていませんが沖縄女性のトップの座も危ういかもしれません。
こういう状況ですから、健康長寿の栄光の座を保ち続けるためにどうしたらいいのか、このあたりにわたくしの関わりがあるのだと思っています。それは医学の領域と思われるかもしれません。
しかし実はそうであってそうでもないのです。
そもそも老化というのは病気でないのです。年をとるとあちこち痛いしいろいろ不都合がありますが、老化を病名にした処方箋はどんなお医者さんも書いてくれませんね。
一方で長寿だからといって寝たきりではいけません。健康長寿ですから、自分のことは自分でできる期間の長寿が望ましいことは言うまでもありません。平均寿命から寝たきりや入院の期間などをした不健康な期間を引いた健康寿命これが長ければ長いほどいいのですね。日本の、そのような健康寿命は2002年の統計では女性で77.7才男性で72才なのです。ずいぶん不健康な期間が長いことに気がつきます。これから見かけは長寿でも、要介護の数がどんどん増えたら家族も国も大変です。このあたりのことは医学ではなくて、社会的な問題なのです。つまり加齢を重ねたひとたちがいかにすこやかに生きていけるのか、健康科学というか生命科学の中心的な課題なのです。メタボリックな病気でなくて、メタボリックにすこやかに生きて行くにはどうしたらいいか。
いまの21世紀の生命科学の先端は、この問題についてはっきりした意見を持ち出していますが、それはなんと江戸時代からも知られていたことでした。つまり腹7分目とかたかだか8分目がいいとか、つまり今風にいえばカロリー制限なのですね。カロリー制限をすると寿命がのびるというのはどうもヒトから簡単な微生物まで生命を通じた真理になりつつあるのです。カロリー摂取をすると20%くらい寿命が延びるのです。それだけでなくメタボ病の改善もあるのです。
いまの生命科学の特徴は分子のレベルでの理解ができることです。メタボ改善の標的がだんだん分かってきているのです。その標的分子はなんとわたくしたちも長年知っているし、長年の研究で、いろいろ関わってきたものでもあるのです。いわゆる地元の研究に近いものでもあったのです。
一つの標的分子は赤ワインの成分であるブドウとか柑橘類に含まれるポリフェノールとかそういうもので活性化され長生きに関わると多くの証拠があります。これで美食のフランス人がメタボ病が予想外にすくないということが説明されるとまで言われています。
わたくしの興味は長生きに関わる標的分子はまだまだ沢山あるに違いないと思っています。
それのような沢山の標的分子を一網打尽につかまえたいと考えだしています。もちろんアイデアはあるのです。なんだか最近体は70才になりましたが、気持ちは30代半ばにちかいのはやはり具体的な大きな夢ができてきたからです。
きょうはこのあたりでやめておきましょう。