損傷チェックポイント遺伝子のはなし

昨日の続き、をもうちょっとしますか。ちょっと難しいかもしれません。

DNAに傷がつくと、生き物というか細胞は、傷を認知して、直そうというか修復しようとします。この細胞の作業をDNAリペアーといいます。きょうはリペアーの作業は細胞の増殖を止めないとできないというしくみのことをちょっと説明しましょう。
たとえでいえば、DNA工場の一カ所で機械が傷を受けたら、工場の作業を全部止めてしまうのです。細胞分裂というか細胞増殖の作業を続けながら、修理はできないのです。

DNA上に傷の生成→細胞が傷の認知→細胞増殖をストップさせる→傷の修理→修理完了→細胞増殖の再開

このうちのストップさせるしくみ、が壊れてしまうと、傷があるのに増殖をしようとするので、細胞はひどい死に方をします。つまり修理能力は正常なのに、増殖を止めて修理させる能力、これをチェックポイントというのですが、が失われると細胞は死滅しやすい。死滅しないと異常増殖を引き起こす場合もあります。
実はこのDNA損傷の認知が、細胞増殖を止めるという発見というかチェックポイントの発見はいまから10年ほど前のノーベル賞の研究なのです。沢山の人々がDNAの修理自体の研究はしていましたが、修理はまったく正常な能力があるのに放射線やDNAの傷に対して強く感受性になるケースの発見で、あたらしい細胞増殖制御の観点が生まれたのでした。チェックポイント機能に特有の遺伝子が沢山みつかりました。酵母のような簡単な微生物でもDNA損傷チェックポイント遺伝子だけでも40もあります。
ですから、ヒトの場合のDNA損傷修復はずっと複雑というのはこの一事をもっても明らかでしょう。

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