お金をつかわずにいかに面白い研究をするか。
いままでのわたくし個人の経験では遺伝的な研究がいちばん安価でしたs。要するに変異体を分離する仕事です。お金をかけずにだれもとったことのない変異体を分離する。とれれば独自な結果を出せますから,意義はあります。しかし最近ではあまり人気がないのはアイデア的に非常に新規なものを考えつくのが難しくなったのと,しごとが記述的、descriptiveと批判される傾向がつよいですね。わたくしはそういう批判はほっときたいのですが,いいところで発表したいと願う若者達には、descriptiveという言葉がまるで汚らしい仕事という語感を感じるようで,こうなると安価な研究,はランクの下の研究と見なされがちになります。わたくしは,それでいいじゃない、別にかまいませんですが、それはもう役目の終わったじいさんのいうことと見なされがちです。
それじゃ安価でかつ汚らしくないメカにスティックな研究が出来ないか。
もちろん出来ます。生化学的な研究です。ただ、トレンディな対象でなくある程度確立したシステムを生化学的にクリーンにやって試験管内反応としてとらえていく。これは案外穴なのですが、しかしトレンディな問題をやるひとがすくない。つまり何がいまやったら面白いのかということを感じるというか分かるには世の趨勢を近未来かもうすこし先まで読める必要があるし、だいたい他人がやってきたことを横から横取りは出来ませんから,自分でシステムを作る必要がある。そうするとかなり時間をかけなければ自分で独自にできる生化学のシステムなどなかなかありません。
ちょっと人気が無くなってほとぼりが冷めたようなものを若者がひろいあげてクリーンな仕事としてやり直すなどとやると、かなり安価かつ独自な研究が出来るように思います。ただ、骨身をおしまずで、面倒でもきれいな結果の出せる系をつくるには,面倒なことをいやがらずにきれいな系を作ればいいのですね。なにを意味しているかというと,試験管内反応は準備段階で勝負の半分が決まる。残りの半分は実験をする人のセンスですね。
安上がりでかつほとほと聞くひと達が感心するような結果をだす、いまの日本そういう方向で生き甲斐を感じる世代が出てきて欲しいとおもいます。
窮乏をなげくより、それがこれまで考えなかったことをやり始める絶好の機会とおもう、そんな風に考えて欲しいものです。