十年前のわたくしが、いまのわたくしの研究グループでやっている研究内容を知ったらたぶんひどくビックリしてなんでそんな研究をしているのか、と聞くだろうと思うようなものがひとつふたつあります。
理由としてはついつい行きがかりでこうなってしまったというのもいちぶあるでしょう。
もう一つは、案外こんな研究をやって見たかったといえるものになるのです。
これまでの経歴とかけ離れているようにも見えるのですが、でも案外自然な自分の興味でそうなってきたとも思えるのです。
わたくしは20代なかばから遺伝解析をもっぱら主たる武器として研究をしてきたものの、遺伝解析を特に愛好していたわけではなく、この方法があまりにもパワフルで役に立つからでしかないような気がします。案外遺伝のルールに乗らないようなものを本当は研究したかったのに、そういう時代ではかなかったのでした。
最近のepigneticな流行は横目で見るというか段々正面から見ざるを得ないような気もするのですが、本当のところ人間を対象にするような研究なら、むしろ[個性の生物学]のような怪しい研究をしてみたいと思ったものでした。怪しいと自分から言っていますが、まさか見かけはまったく怪しくなく見事にまともな学問になっていますが、根底的にはそういう個性を個性として受けとめいかなる説明もありうる、360度のワイドアングルで考えを受け入れる人間個性の研究を物質基盤でやってみたいという、そういうあやしい魂胆を秘めています。
たしか酒席では40代の頃からそんなことをたまに言っていたような気がします。
それが現実化してきました。まあ、この年でですが。
自分には才能がないと早々とあきらめた文系の才能でごはんを食べる路線を復活しようとする無意識の試みかもしれません。
千里の道も一歩からですから、一歩進めた気分は割合いいものです。