年の瀬一瞬ののんびり、わたくしの細胞研究の観点

年の瀬です。あしたまで大学に来ますが、きょうはポッカリと一日あいた感じです。
この12月中はじめて仕事に追われているという印象を持たない日でした。
A君、N君の論文も終わったし、例の本の一章も最終的なものをPDさんに送りました。
年度末、研究費もまあまあ残ってるし、気にしなければいけないメンバーの研究進捗もそれなりに対応しました。
明日は来客がありますが、きょうは希な本当にのんびりした気分になって、昼飯にお餅の二個入っている大力うどんを食べたてしまった後、キリン館で正月にくる孫たちの遊び用のカルタを買ってそのあと自分用に金平糖屋のある通りの古書店で数冊本を買いました。正月用です。当たり外れがあるので、5冊買いました。
最近買った、悪党芭蕉という嵐山氏の本はまだ終わってませんがかなり面白い。それからこれも途中ですが、黒澤明の10年間とかいう本もまあまあで並行して読んでるので、正月には役にたちません。
比良のほうには、読んでない本はそれなりにかなり買ってありますが、正月の気分に合うものがあるかどうかは疑問でした。

昨日の続きみたいなことを、すこし書いておきます。
わたくしの長年の関心は染色体ですが、幸運なことに沖縄で新規の研究を開始でき、そこでは細胞そのものに挑戦しています。どう挑戦しているかというと、増殖しない細胞(つまり神経とか、心臓とか筋肉とかの細胞は増えませんというか細胞分裂はまれにしかしません)がいかにして生き続けるのか、こういう問題を遺伝子レベルで解明するというのが課題です。細胞はこれまで長年付き合ってきたわたくしのペット、分裂酵母細胞です。
窒素源を枯渇すると、まったく増えないで長期に生き続けます。これをモデルに研究しているのです。
3年半やって、これに増えない細胞はなぜ長生きしているのか、とう問題も加味して考えています。細胞老化の問題は目の前にあります。
こういうテーマはわたくしがいちばん得意とする、増殖中の細胞の中での染色体の挙動とか娘細胞への分配とか、そういうことには一切頼れませんので、自分の両手をくくったあとで、問題に挑戦した気分があります。研究費コンペに応募したので、自分のまったく得意にしていない分野で挑戦しなければならないという使命感がありました。
そういうわけで、増えない細胞が増えるようになるとか、増えない細胞がいつまでもその状態で生き続けるとか、誰もが知っている現象ですが、その背景にある必須な働きを持った遺伝子はどんなものでどんな風に働くのか、こういう興味を持って始めたわけです。
この三年半で、色んな事が分かってきました。これまでわたくしが長年つちかってきた遺伝子やタンパク質がこういう研究にはまったくでてこないことをいやというほど味わいました。その一方で、栄養吸収、糖やビタミンの代謝とか細胞内外のアミノ酸や種々の物質輸送とか、オルガネラ、ミトコンドリアの制御とかいろんなこれまではまったく専門的な関心を持たなかったことにいやがおうでも真剣にかかずらう必要性が出てきました。ほんとに、寸暇を惜しんでこれらについての最新の論文を読み込んできました。
医学研究での幹細胞の形成とか、細胞死とか、ひとごとでない関心を深めてきました。
頼りになるのは、わたくしたちが関わりだした遺伝子群の働きで、それがどんな働きを持っているのか、考えだすと、やはり研究進展の著しい医学畑での接点が多くなります。いっぽうでわたくしが沖縄での研究を昨年の北海道の循環器関係の夏の学校、それに今年の初めニューヨークを皮切りに発表してから、国内外多くの人達が関心を示しだしてくれてます。これまで経験のない分野とか会ったことのないような人達が興味を示してくれています。はっきり手ごたえがあるのです。論文もまあわたくしの目では順調にでだしてきました。
山中さんの研究でのiPS万能細胞に必須な四つの遺伝子のうちの一つがこの沖縄でやっている研究での一つの遺伝子と遠い親戚くらい似ているので、どういう働きをそれはiPS細胞でやっているのか、具体的な関心を持ち始めていたのでした。
4月にわたくしどもが沖縄でやる国際ワークショップに、山中さん極めてお忙しいのに来ていただいて、講演をしてくれるとのこと、ありがたいことです。

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