けさは朝からみぞれ的な雪かとおもうと太陽がでたりで、はっきりしない天候です。ただ一日中風があって寒い。
正規というか5年目の院生のI君の学位の公聴会があったとか。わたくしは審査員の資格がないので、制度自体への抗議の意味も含めて公聴会にはでません。
合格とかで、そのあと今後のこともあり彼と昼食を共にしました。
そのあと、京大病院のほうで定期的な主治医による診察がありました。朝、尿血液などの検査があり結果がでています。HbA1Cは前回とおなじ、ギリギリ5.9という値でしたが、お正月の後の割にはよろしい、ということでした。他の数値も全体として改善されているとのこと。格別の努力はしていませんが、一昨年の10月以来の努力によって体質がかいぜんというかかなり変化したことは事実です。運動できなかった日はストレッチですこし汗ばむ程度運動をするといい、というA医師のお話でした。
糖尿病とがん、二大生活習慣病ですが、もちろん家族性の面もあります。
肥満(習慣的食べ過ぎ)と喫煙を追放すれば、国民レベルでのかかる人は激減するでしょうが、これら2つの病気は医学的にはずいぶん違った状況にあります。がんのほうは、その原因について大変な進歩がありました。体細胞のDNAレベルでの病気でして、がん細胞は他の体細胞とはDNAレベルで異なったのでその性質が「がん化」したわけです。がんには非常にいろいろなタイプがありいろいろながん細胞がありますが、その原理的なレベルでの理解は非常に進んだと言えるでしょう。
ただまだ満足な治療法が多くのがんでないので、がんになりやすい生活習慣や機会を避けるというのが統計的にはもっとも有力な方法になります。
しかし、政府や製薬会社のミスで肝がんになるかもしれないようなアクシデントに見舞われた人達がたくさんいるわけで、かれらの怒りは当然です。誰を信用していいのか分からなくなりますから。アスベストによるがんもありました。これからの新たな人為的ながん化を避けるのは自らよく考える必要があります。わたくしは中国製の食べ物やプラスチックや塗料など化学製品は極力食べたり身につけるのを避けるのが無難だとおもいます。日本製が絶対安全というわけではまったくありませんが。
がんに対して、糖尿病はずっとその病因の理解がとぼしいのです。
Avram Hershkoさんとゆっくりおしゃべりする機会があったときに、わたくしが糖尿病のことを聞いたら、ミツヒロ、糖尿病の原因はほとんどなにもわかってないのだよ、といっておりました。彼はタンパク分解でノーベル賞をとった方ですが、もともと医学を勉強した方ですし、いまも医学生に糖尿病を講義で教えてるということですから、軽い気持での発言でないことはまちがいありません。彼の透徹した頭脳では糖尿病の研究状況では何もわからないと言い切りたいのでしょう。
こういうひと言はとても大きいのです。わたくしもその後自分のことがあり、色々勉強していますが、がんの理解の度合いにくらべれば、本当になにもわからないというのが学問的な感想です。しかも糖尿病は合併症がでて、目がみえなくなるとか、足が腐るとか、透析をしなければならないとか、心筋梗塞や脳出血に見舞われればだれでもひどい病気をわかりますが、それはもう糖尿病のどんずまりでして、大半の人はわたくしのように痛くも痒くも、体の不調もなにも感じないわけで、そういうひとが日本国民中2千万人とか千5百万いるとかいるのですから、これをどう捉えるかは、容易でありません。食べ過ぎとか運動不足とかストレスとかそういうものが高血糖を引き起こすのでして、しかしそれ自体はある日に合併症がやってくるまでは、破裂も爆発もせずに体内でじわじわと体をむしばんでるわけです。
ひとことでいえば、炭水化物、糖分の体内での処理が不調になった状態が10年単位で続くことから起きるのがいわゆるII型の糖尿病で、わたくしが長年やってきた分子生物学がなかなか適応できません。時間単位が長いのです。それに炭水化物代謝というDNAから遠い生体物質のために分子生物学者にとってはなかなか遠い問題だったのでした。しかし、わたくしは自分がなったおかげというか、そのおかげでずいぶん理解が出来るようになりました。
正直、今は余生というか糖尿病の研究のどこかの一角に食い込みたいと、最近は真剣に思いだしています。それで釣り師が釣り場を探すように、わたくしも糖尿病理解のための釣り場をさがしています。