大学院生はいかにして生きぬくか How graduate students can survive

学生さんに、あなた経営者のマインド持ちなさいよ、というときょとんとした顔をします。アカデミズムの一番下っ端に向かって、何をいうのか、と感じるからでしょう。でも、これ真面目な助言です。あなたが、朝から晩までどのように過ごすか、誰が決めるのですか。大半はあなた自身でしょう。誰としゃべって、何をやって、何を見たり聞いたりするのを決めるのもあなたでしょう。将来の道を決めるのもあなたでしょう。大切な将来の道を自主的になおかつ場合によっては周囲の人の助言を入れて決めるのもあなた自身でしょう。あなた自身の人生の経営者はあなたですね。人のせいにするのはほどほどにしないと。あなたの研究指導者を決めたのはあなた自身ですよね。教授がいいと思ってそのラボにいったら、ひどい上級生につけられたとか(その逆もあるでしょうが)、しかし、それはあなたの調査が不十分かあなたがそのような状況に向いてると判断されただけですよ。ひどい大学院専攻に来たとか、ひどい研究室に来てしまったとか、嘆くのなら、別な大学院や研究室に変わればいいじゃないですか。それができっこないと思ったら、あなたはこの世界から足を洗いなさい。今からでも遅くないですよ。研究室主宰者が誇大宣伝をして被害者学生を勧誘するなどというのは、大学学部入学以来サークル勧誘などずっと知っていたことでしょう。自分の稼業ですよ、サークル選択などの甘っちょろい選択とはぜんぜん違うのです。被害の大きさは。この世界で始めに知るべきことだったのですから、それも知らないでは、自分の人生の運営は大変ですよ。でも、ご心配なく。20台は人生における失敗の宝庫なのです。失敗毎に人間は大きくなっていくのです。失敗を糧にするのも、あなた自身の人生の経営マインドにかかってるのです。わたくしなんかも、人には言えない若い頃の失敗沢山ありますよ。でも改めるのに何も憚らなかったですよ。
つぎに、あなたは自分の社会性の有無について、自ら多大な関心を持たねばなりません。自分は、周囲で人気が無いな、と思ったら、人気のない人間はいかにして人生を生きぬくか、真面目に考えなさい。ほどほどの人気が出るように、自分をぼちぼち変えなさい。でもあなたは孤高の人生を歩みなおかつ三度の食事も自分の甲斐性で購える自信が十分おありになるのなら、社会性などは忘れて我が道をいけばいいでしょう。自分は異性にもてたい、とおもう若い男女が、それじゃどうするか日夜考えるのは、「愛」を人生の最大の目標にする人達にはあたりまえのことですね。「研究を稼業にしたい」とついつい思ってしまった、あなたはやはり、研究稼業を続けるのなら、いかにして他人との関係をスムースにするか、コミュニケーションをちゃんとするか、そのうえで相手にどう好感を持ってもらうか、考えなさい。研究とは他人とのコミュニケーションですよ。おもしろいこと発見して、一人でずっとにたにた笑っていたいのですか?どこにも発表せずに。それとも、誰かがあなたの発見を「発掘する」のを待ってるのですか?

もしもあなたが、博士後期課程の2年くらいで隣の研究室や異なる大学の分野の似ている研究室で、年が5年以上(もちろん40才上でもいいのですよ)うえの先輩的な研究者と親しい関係がなかったら、あなたの将来はかなり厳しいでしょうね。先輩研究者と談笑する能力は研究稼業で最も大切なものの一つです。同輩としか話しが出来ない人達、自分のラボの人間としかつきあえない人達はこの世界ではほぼ落伍者です。そうなりたくなければ、イヤな奴らとおもっても、先輩連と話しをする訓練を自らに課しなさい。
先輩研究者がもしも、将来自分がラボを持ったら、一緒にやらないかといわれるようなことが大学院中に複数回あれば、あなたはたぶんこの世界でご飯を食べていけます。食いっぱぐれは無いはずです。ただ、自分を安く売ってはいけません。安く売ってしまって、どうにもならなくなる人は多いですね。研究稼業にはトップとボトムの両方がありますよ。トップを目指す人はボトム(失職など)に合う機会も高くなります。トップでもなくボトムでもない普通の生活を望む人が多いのは当たり前です。トップを目指す人はいろんな義務がついてきますよ。
何を目指すにせよ先輩的な研究者との交流がほとんどないとかなり厳しいです。まずそのあたりを自覚してください。それじゃどうするか、今日のブログの最初に戻って読み返してください。自分が自分の人生の経営者であることを再確認してください。
それじゃ、もう一つ、生きぬくためのアドバイスです。あなたが生みだす、データのことです。データを生むこと、当たり前ですが、これが院生稼業の一番大切なところです。アカデミズムの最底辺にいる以上、上の方にいる、口だけで頑張っている人達とは違うのです。大学院生は、自ら馬車馬(今じゃ流行らない例えですね、見たこともないでしょう。でもわたくしは見たことあるのですごくリアルな例えです。これ以上よい例えはおもいつきません)とおもってデータを出さねばなりません。文句を言われたら、その文句に理があると感じるのなら、文句を言われないようなデータを出すべきです。この点に徹底すべきです。論文を投稿しても、最後の一人の批判者までもが黙ってしまうようなデータを出すべきです。こういう気迫を持つべきです。その気迫は周囲の人間にも分かるようになります。気迫のある学生さんは、周囲がほっておきませんよ。理不尽なこともおきにくいものです。駄目とおもっても、なるべくならTKOを自分が自分に宣告しないように。できたら、周囲が出してくれるといいですね。でも周りにそんな人がいなければ、自分で自分のレフェリーになるのですね。完敗するのもいい経験ですよ。
優れた外部の訪問者が無いラボでは、ポスターを出して、学会で一流の先生に見てもらうべきです。来てくれなければ,会場で呼びに行くべきです。かくかくしかじか、説明してあなたの熱意を示せば来てくれるはずです。わずか5分でもいいから、展示中に来てもらってデータを見てもらいなさい。それらのデータをもとにどんなお話をあなたがつくったのか、聞いてもらいなさい。真に一流の先生なら、ひと言あなたがはっとするようなことを言うか、それとも肺腑を抉るようなことを言ってくれるはずです。そうでなければ、それはあなたの理解が鈍いのです。ごちゃごちゃ話し出して3分以内に自分の一番大切なデータのポイントを相手に伝えられないようなら、せっかくのデータも泣いてしまいます。

タイトルとURLをコピーしました