午前京都のラボで忙しく用をすませて、午後は東京にでてT先生の主宰する学術会議の分科会に出席しました。最近の日本の国情は若い元気のいい研究者を育てるのが難しくなってきました。研究経費が目先の効果ばかりに向かえば最初の効果はそれじゃ若者はやってこない、ということです。これは経験的真理です。
次の時代をになう若者はそういう点に鋭敏です。
わたくしも、中学生の頃に学者になりたいと、思った理由の一つは、「勝手なことが出来そう」という印象でしたから。
昨今では、研究経費がないとなにも出来ないという国情なので、困ったものです。研究グループが、応用的なものに向かえば向かうほど、白けてしまうのが普通の若者です。
基礎的な研究のおもしろさ、創意工夫によって無から有を生じるような研究体験の楽しさが若者を育てていく最良の土壌なのです。
昨今の日本の研究経費事情は促成栽培のデマンドが強すぎます。生命科学でこれまでに偉大な技術開発といわれるような研究もたいていは純基礎的な役にたつことなどまったく考えたことのないような研究が生みだしたものなのに、なかなか行政はそのあたりを理解してくれません。こんな調子での研究費分配方策が今後も続くと本当に日本の研究は大丈夫なのか、あちこちで聞かれる言葉です。
きょうの会議はそういう危機意識をみなさん共有したうえでのぎろんでした。
しかし、わたくしもいまはそうおもいつつ、もう前期高齢者なので、高齢者的な純趣味的人生を送らしてね、というのが正直な気持です。