朝地下鉄の駅で乗ったエレベーターの中で突然「柳田先生」と声をかける女性がおられ、大きなマスクをしていたので、「あなた誰?」と聞いたら、「Oです」。懐かしい。10年近く前に秘書だったOさんでした。いま京大病院のS科にいるとのこと、おもわず病院にはいくけど「S科」にはいかないな、と言ったら聞いて笑った人がいました。熊野神社まで近況を話しました。お忙しいようでした。
まだ首相になってわずかに2か月で内閣の支持率は今回の仕分け作業の興奮もあって、非常に高いのですが、わたくしには鳩山首相には辞職の道しか残ってないように見えます。
ご自身の政治資金はなんぼなんでもひどすぎてこれでどうやって生き延びるのでしょう。致命的なのは家族のお金が数億円も入っていたことが分かりつつあることです。たぶん彼が愛してやまない母堂を巻き込むのは、あまりにつらいに違いありません。それにご自身がなんどもなんども秘書の過ちは雇用した政治家の過ちと断定した民主党代表時代の演説があるのです。この過去の経緯を考えると、どう言い逃れるのでしょう。知らなかった、非常に驚いた。ほんとうにごめんなさい、ですむのでしょうか。自民党が党利党略でいろいろいってくる前に、辞めたくなるのではないでしょうか。民主党内閣はこれからも続くでしょう。でも、鳩山首相への信頼はかつてのこの言動がくりかえし放映される過程で失われていくでしょう
日本が政治資金に厳しい国だと近隣諸国にも世界の人々にも分かってもらった方がいいのでしょう。選んだばかりの首相が辞めるのは国民も恥ずかしい限りですが、でもこの道が残ってるだけでしょう。
科学技術が一番分かるはずの首相が、政策の根幹方針についてなにもはっきり言わないうちにこの仕分け作業が始まってしまったのは極めて不幸なことだったと言わざるを得ません。日本の歴史始まって以来の理系で博士号を持つ鳩山首相が司令塔にいて、このような状況になってしまったのはなんという皮肉でしょう。
首相が科学技術の重要性を力説し、国の寄って立つ根幹であることを明確にし、科学技術の発展の道筋を明確にした上で、政策の根幹を前もってきちんと述べれば良かったのです。そういうものを持っていなかったのでしょうか。行き当たりばったりだったのかもしれません。
予算総額を明確にしたうえで、丁寧に予算の効率的運用を主張すれば、どんな大学人も研究者もそれに反対するのは困難です。
研究者はほんらい節約や合理化は納得がいくなら喜んで協力する性質をもっているはずです。
たとえば海外のメーカーから直接購入するだけで、国内価格5千万円の装置が半額くらいで買えることもあります。なぜそれができないのか、そのあたり組織の体質改善を考える方が、天下りを叩くより意義があります。本当はできるのです。ただ事務職員の献身的な協力が必要なことは確かです。
今朝益川さんがテレビであの「文化大革命の時の紅衛兵のようなやりかたはいけません」といみじくも言ったように、今回の科学技術研究費の仕分けのやりかたはどう見ても乱暴です。
政治主導、政治家が前面にでる改革方式というのはこういう結果を生みだすのか。研究関係、大学関係はみな驚いてあきれているのが現状なのです。
名古屋大学の学長さんがおっしゃっていることの毎日新聞での記事を下にコピーしておきます。
名古屋大学の浜口道成学長は25日の定例記者会見で、「明確な国家戦略もなく、効率というキーワードだけで一律にカットしている。赤字が解消しても日本は死んでしまう」と痛烈に批判した。
浜口学長は、特に若手研究者の育成や女性研究者支援に関する予算の縮減が求められたことに、「日本の資源は人材しかない。次世代の産業開発を生み出す研究者を切ろうというのは、日本が生きる唯一の道を閉ざしているとしか思えない」と述べた。「現場を知らない人たちが短期的な視点でマイナス要因だけ見て決めている」と、仕分けの手法についても疑問を投げかけた。
日本の資源は人材しかない、に日本の国土を足したいですが、でも賛成です。わたくしも、テレビで見ていたら、「若手の研究者の飯の種、というか生活保護のために予算を使うのはいけない」、というひどい言葉使いで予算の削減を主張した民間人の無理解に呆れました。研究予算の多くは人件費でしょう、しかも若手こそが国の一番大切な宝なのに。
昨日東京大学であったノーベル賞受賞の人々の会合にでたというYさんからのメールでは、久々に大学院生が危機意識をもって深く考えた意見を発するのを聞いた気がします、とありました。
今回の出来事のひとつの救いは、このように多くの科学技術にかかわる人びとが覚醒する出来事となりつつあることです。
しかし問題はその結果、人々はどこに向かうかです。どう考えても深刻な状況が続くことは変わらないでしょう。いまの民主党の有力な議員の考えは無意識下に反科学技術研究的な思考と行動をするようにみえます。それにいま程度の批判ではまったくへこたれていないようです。
民主党政権が続くかぎり厳しい状況が続くのかもしれません。
わたくしは、自民党はもう消えてしまったようないまの状況では、民主党議員が科学技術の発展こそが日本が生きる道とほんとに思って頂けるようになるような状況を作っていくことだと思うのです。でもそれが非常に痛い学習の後に分かるようでは、まさに日本は死んでしまうという表現は大げさでない、と思います。予算案の決まる年末まで油断のできない日々が続くのでしょう。
しかしいっぽうで、昨日も述べたような自助のみちを実際に実行することを、考えだしたいと思っています。