トヨタプリウスリコールに見る日本的問題、抗がん剤の副作用

トヨタの金看板のハイブリッド車であるプリウスのリコールはもっとも日本的問題として日本国民は極めて深刻に受けとめた方がいいとおもうのです。
この問題はたぶん石原知事がリーダーとなって運動したオリンピック招致の失敗に見る日本的問題とも深いところでつながっているとおもいます。ある意味、何年経っても上手にならないのかどうかしりません松井選手の米国における英語での自己表現能力の低さとも関わっているのだとおもいます。

つまり素晴らしい製品ならすばらしい物作りの成果をうることができればあとは無言でもいいのだ、素晴らしい修理能力と整備能力があれば、無言でもいいのだ、こういう日本の海外での伝統はもう百年前からあるのです。
今回のように、いっぽうで米当局がとことんのところで何を考えているのかそれをつかむ能力がトヨタはかなり弱かったのでしょう。そして自己の物作りの能力への過信があったに違いありません。コンピュータと実際のブレーキ部分の接点でのトラブルと聞くとまさに弱点の部分でしょう。しかしそれでも外国での折衝能力、危機への研ぎ澄ました感覚があればここまでの大問題にならなかったでしょう。でもこれはトヨタだけの問題でなく、日本の全体での問題なのでしょう。
韓国出身の国連事務総長の存在をわすれてはいけません、スポーツ関係でもFIFAでつらい目にあったことは記憶に残ります。国際的舞台でトップに食い込む日本人の稀少さは、韓国や中国と比較すれば眼を覆うほどです。研究の分野はこれまでの実績があり韓国や中国にくらべればまだまだ日本優位ですがもうあまり持たないでしょう。特に中国の台頭に。
いってしまえば身も蓋もない話ですが、国際レベルでの真のリーダーやエリートが日本にはほんとうに少ないのです。そういうものは20代から育てていなければ育たないでしょう。しかも20代から海外に行ったからといってなんとかなるものでないのです。和魂洋才という誤った考えで海外で生きてはだめで、和魂和才かそれとも地魂地才(地とは地球の意味)でいかないといけないのに。そもそも国際レベルでのリーダーを目指すような目標を持った若者などそもそも日本にいるのでしょうか。もう、ここでやめておきますが、トヨタの問題はわたくしたち日本人の今の問題なのだと思いますか。心に痛みを持って事の推移を見ています。

話はちがいますが、沖縄でのTK君の研究をする過程で抗がん剤について考える事がありました。
化学療法でつかう制癌剤の多くははっきりした標的物質があります。タンパク質である酵素とか構造タンパク質とか場合によっては遺伝子DNAそのものに標的するものもあります。シスプラチンというのはDNAそのものに標的します。5-FUという物質は核酸代謝を阻害することがしられています。また最初は臓器移植時の免疫抑制に使われていたラパマイシンとか類似薬剤は標的としてTORというタンパク質リン酸化酵素を阻害するのですがTORが細胞成長に必須ということもありいまはもっとも有力な抗がん剤になるのではないかと期待されています。いっぽうで微小管の阻害剤として研究室でもっともありふれた薬剤であったものが最近抗がん剤として脚光をあびています。だれでも知っているように、こういう抗がん剤は副作用があります。つまりがん細胞でない細胞に重篤な悪影響を与えてしまうのです。ものによっては副作用が極めて重いものもあり、それで限られた期間限られた量しか使えないものが多いのです。その副作用を軽減することが大切なことはいうまでもありません。
たとえば多発性骨髄腫というがんにベルケードという薬剤に相当な効果があることが最近分かってきました。日本でも臨床試験が進行中でもありますが多くの患者に著功があるといわれています。聞いた話しですが短期間で世界中で利用され年間2兆円の売り上げがあるのだそうです。
この薬剤はプロテアソーム阻害剤なのです。プロテアソームをある程度研究してきたものなら生命活動の多くに必須な働きをもつプロテアソームを阻害したらものすごい副作用がでるのではないかと考えがちですが、実際にはプロテアソームの細胞増殖における部分に働きかけがん細胞をアポトシスで死滅させる効果があるとのことです。
しかしいずれにせよどんな抗がん剤も副作用をもつのですから、抗がん剤の毒性の研究は大切でしょう。今後の治療のためにも新薬を探すのと同じように、既成の抗がん剤の副作用をいちじるしくさげることも同様に重要でしょう。副作用が微弱にできれば治療にいろいろな新しい可能性がでてきます。プロテアソームを阻害するといくつかの非常に好ましくない副作用があることが今回の網羅的な研究成果で新規にわかりました。それらを軽減することを目標とするような研究が大切だと思いました。

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