ロイヤルソサイエティの成り立ち

一日に2回目の投稿となりますが、いまロンドンのシティエアポートにいてフランクフルト行きを待っているのですが、無料のWiFiというのですかネットが使えるので書き足しておきます。

コンボケーションに記述をするまえに、そもそもこのロイヤルソサエティのことを書く必要があるのではないかと、コンボケーションの後で沢山の人々のあいだで見かけた10人ほどの尾身元大臣を中心とした日本人グループを見て思いました。たぶん学術振興会の理事長とか学術会議の会長さんとかもあの中にいたのでしょう。たぶん。

英国のロイヤルソサエティつまり王立協会は350年前に出来たというのですから、歴史が古いのは当然ですが、もうひとつの特徴は英国王のチャールズ二世が作りなさいということで、出来たというものでつまり日本的には勅許ということになるのでしょうか。昭和天皇も会員の一人であったということは知る人ぞ知るでしょう。会員になると会長というかプレジデントの前で部厚いノートに羽根ペンでサインをするのです。

日本からえらい人やえらくない人がぞろぞろいっても決して気がつかないと思われるのは、会員(FRS)は会費を払うのであって、無料でもなくまた年金をもらうのでもない、基本的に自腹を切って、場合によっては高額の寄附にも応じることによって成りたっていることです。名誉系の組織はこうあるべきという代表例です。国の丸抱えである学術会議や学士院とは根本的になりたちがちがうことに気がつかないといけません。

わたくしは外国人会員なので、会員と同様に羽根ペンによるサインの儀式をしてFormemRSなるものになるのですが、外国人に対する名誉的なものなので会費は払いません。だから会員の権利の行使である投票権はありません。そのあたりはEMBOの外国人会員も同様です。ただ、FRSやFormemRSの候補者の審査には書面で参加します。委員会から照会があり対応をしたことがあります。
毎年熾烈な競争があり審査は大変なようです。非常に政治的とうけとめる研究者が多いことも事実です。建て前と本音はどこの国でもあります。
わたくしは投票権はないものの、誰かを会員になってもらうべく個人的なキャンペーンをすることも可能です。また会合の企画もすることも可能で、これまでに一つやりました。

ロイヤルソサエティはなんのためにあるのか。上で言ったように、名誉系の組織とはいったものの個人的な名誉のエゴを満足させるためにあるのではありません。
国家が名誉をかけて力を発揮しなければならないものの代表が「科学」だという認識があるのですね。
そのことを英国民に広く理解してもらうためには、科学がどんなに深くて広い価値があるのか、うまずたゆまず努力しなければなりません。親しまれ、そして栄光の歴史も知ってもらわねばなりません。社会にたいする科学者の努力のための組織でもあり、一方で栄光の歴史を維持するためにみずからを奮い立たせるための組織なのです。軍事的な力とどこかで類似するものがあるのです。ワールドカップのサッカーでの戦いともどこか似ているでしょう。
コンボケーションの会場には、ダーウイン、ボイル、ニュートンとチャールズ2世の大きな肖像画がかけられ、われわれをにらみつけているような印象はわたくしのひがみでしょうか。

科学は平和的な活動ですから、あくまで組織は国家が運営するのでなく、科学者が自主的に自腹を切るべきなのです。国の名誉をかけるのだ、といってもそれはむしろ国民の期待にこたえようとするものなのでしょう。そのために国王がぜひやりなさいと王室としての応援はする、しかし政府が顔を出すことはないのです。
日本に科学を広めるためのそんな組織はあるのでしょうか。残念ながらまったくないといわざるを得ません。
役人がぞろぞろ視察にきたってなんの足しにもならないのです。国の名誉をかけるのに、科学者がみずからやるのでなければ他の国の人たちはそのような活動をどう見るのでしょうか。
あくまで人類普遍のための価値のためにある科学ですが、科学者は国籍をもつわけですから愛国というか愛郷の精神は強く持つのも当たり前です。ロイヤルソサエティはそのあたり非常に上手にこれまで運営していると思います。普遍の価値のためにがんばる英国科学者の自助の組織を王立ということで運営する。巧みとしか言いようがありません。日本も国の成り立ちは似ているのですから、真似は出来るかもしれません。でもそれは、科学者がみずからやるのでなくては。
だから外国人の会員や昭和天皇の特別会員は科学のもつ人類普遍の価値を広めるためにも非常に重視されています。
平成天皇の科学者精神も英国ではよく知られていることです。

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