あしたは那覇にでて、沖縄県における知的クラスター形成に向けた研究拠点構築事業のひとつ、わたくしが統括役をひきうけている、[健康長寿改善のための技術開発のための、有効成分の経皮吸収等の新手法を利用したメタボロミックな基盤的研究」の第一回研究推進委員会に出席して、委員のかた達に研究の概要と進捗状況を説明します。
沖縄は長寿の島ですから、いまでも女性は日本一、ということは世界一の長寿ですから、その秘密を理解し、長寿健康ブランドを利用して産業育成に努力する、これは誰もが考えることです。そういっても誰も反対しませんが、それでどれだけの規模の産業を作れるか、疑問符がつくでしょう。最大級の規模の産業が作れそうと言う夢がもっともらしく聞こえなければあまり評価されないでしょう。
この5つのグループの研究は基盤研究つまり基礎的な研究です。しかしその目的は開発ですから、3年間という短い期間とはいえ、産業開発にむけてかなり明確なメッセージを世間に発しなければいけません。
わたくしが考えた計画は、人間の健康は血液の様子をみれば分かる、今後の研究で長寿も血液の様子を調べれば分かるというものです。この場合の血液の様子をメタボロームという千種近い代謝物の組成と量をしらべるというものです。それに使う機器は質量分析機なるもので、使い勝手のたいへんよいものが作られてきてそのような代謝物の根こそぎ解析的な研究が可能になりました。長寿健康者になるための血液の条件がわかればそのための産業育成はおのずと方向付けがはっきりするでしょう。
この夏に研究が開始されてから、もう数十人の被験者のかた達の血液をもちいて200回にもおよぶ試料作成が行われ、膨大なデータが集まりつつあります。共通性もありますが、個人差の大きさにおどろきます。
しかし、琉球大学病院との共同研究がまた認可段階にまでたどり着いていないので、沖縄の特に高齢者の方々を被験者としたデータはまだまったく出せていません。こう言う研究は認可が必要なので、とても準備に時間がかかるのです。
さて、それではこの血液メタボロームの知識をどう利用するかです。
血液は人間の活動を支える栄養物があるのですから、からだの健康状況のみならず平素どんな食べ物を食べているのか、体内の様子が、よく分かります。もちろん持病があるかも分かります。しかしわたくしたちの目的は健康長寿に役立つ情報をいかにして健康人の血液のメタボローム情報から引き出すかです。
それで、もう一つの大切な視点があります。沖縄というブランドをいかにして維持できるか日本の他の地域が容易に模倣できないものはなにかです。沖縄の産業の弱さは、すこし良い芽がでても他の地方に取られてしまうのです。いかにも沖縄らしい、黒糖とか泡盛ですが、沖縄のお土産店では沢山ありますが、内地にいけば普通の甘いものと焼酎に割り込んで入るだけの力がありません。マンゴーにしても柑橘類にしてもいいものが沢山ありますが、でも内地にもあります。
わたくしが考える沖縄らしさは、やはり沖縄の土壌だと思うのです。この珊瑚由来の土、赤い土こそがブランドの原点だと思うのです。生物学者は土のことを知りませんが、しかし生き物は土から生まれて土に戻るのです。牛乳を飲むのは、牛を食べるのでもなく、草を食べるのでもなく、まさに生き物が媒介した土と水に由来するものを飲んでいるのです。沖縄の土、これだけは内地のどこにも手渡さないで、自分たちのブランドしてずっと使い続けていけるのです。
そう考えて沖縄の生物産業に関わるひとたちはもっともっと土に関心をもつべきです。
こういう考えはある種のかけの要因も入っていますが、運を引き込むには賭けがいるのです。
きょうは、ここで時間切れとなりました。
朝の仕事が待っています。