血液中のコンパウンドの個人差

一週間後に札幌にでかけます。日本血液学会で教育講演なるものを朝早くからやります。
もちろん医師が集まる学会ですから、人間の血液の話題をせねばなりません。
講演タイトルは「血液メタボロームの個人差からなにがわかるだろうか」というものにしたはずなのですが、プログラムでは仮としたはずのごくごく地味なものになっていました。まあいいでしょう。
この場合の個人差とは、病気による違いではなくて健康人のあいだでの違いを研究対象にしているわけです。
食べるものが違うのだから違うのは当然、というのはただしい。一日の時間帯でもちがうのではないか、とかそういうのもある程度当たっています。例えばグルコース量である血糖値の変動は食後かなりあります。
でも興味があるのは、ともあれなんでもかんでもひっくるめてどれくらいの血中コンパウンド(小さな分子、メタボライトともいいます)に個人差があるか。血漿ではなくて赤血球内での違いでみたい、赤血球はいちおう細胞ですので、いろいろ興味深いコンパウンドがあるので。コンパウンドのなかにはあまり個人差がないものがありますから、そういう不変なものと比較して、変動するのには理由があるでしょう。本当は一回測っただけではその個人のかたのデータとしては不完全で、2年くらいおりおりに調べると色々なことが分かって面白いのですが、まあそれは沢山の人たちで出来ることではありません。
狙いとしては、年齢差のでるコンパウンド見つかると面白いのだが、でした。
じっさい少数ですが見つかりました。その意味はすぐには分かりません。若さのシンボルとか、老齢のシンボルのようなコンパウンドがあるのでしょうか。分かりません。興味深いと思ってやっています。
だいたい80くらいのコンパウンドが個人差がはっきりあることがわかって来ました。ひとつずつ吟味していきたいと思っています。
なかにはカフェインのように個人差をあまり吟味しなくてもいいようなものもあります。でもカフェインの量は今朝コーヒーを沢山飲んだから血中にも多いとかそんなものではありません。体内蓄積によるものでしょう。からだのどこにため込んでいるのか分かりませんが、日毎に大きく変動するのでなく、もっとゆったりとした変化の波があるようです。
80という数のコンパウンドはかなり多すぎるので、せいぜい数種に絞りたいと思っています。でもどのようにして絞るか、これらが体内の存在意義は分かってるものもはっきりしないものもあるので、そのあたりの吟味を分裂酵母でやって見たいです。
じっさい血液でのコンパウンドの大半は酵母の細胞にもあるのです。
驚く血液学の研究者が多いかもしれません。
血液学に無知なわたくしは、またまたそうだったのかと無感動に感じるだけです。
そういう人間のやる教育講演なのですが。ちょっと恥ずかしいという、感覚もあります。

タイトルとURLをコピーしました