年の瀬です。
師走ともいい、平素は走らないような「師」も走ってしまうくらい忙しいのが古来からの習わしなのだそうです。新春にはのんびりして先のことをゆっくり考えたいからでしょう。しかし、さいきん、「師」をつける職業もだいぶ増えたし、平素から忙しそうな職業が多いので、師走はもはや実感がありません。
さて、ここで今年を振り返るとやはり「災害」がキーワードの一つになるのは間違いないですね。しかも、その上に人が付くような、人為的災害が多くなりました。社会の中に、災害を起こさないような、大切なモラルというか、わたくしなりにいえば「社会の芯」が細ってきた印象を強く持ちます。本当に、こわいことです。
最初の頃の姉歯氏の表情とJR西日本の大事故の直後に出てきて、JRが被害者かのように発表した二人の表情が、ことしの二つの代表的表情でした。かれらを個人的に誹謗するのではなく、まさに職場での日常的な考えが、大事故というか大事件化したときについ出てしまったと受け止めました。
ほかでは、幼い子供たちや女性が殺人の被害者になることが多く、日本は女性や子供にとって、本格的に危ない国になってきつつあるとの印象を持ちました。
しかし、今年起きたことで、印象の最も強いのが、なんといっても中国との関係がどんどん悪くなって来ていることしょう。経済はまだまだ残ってますが、それ以外はほとんどすべて政府間レベルでの良いことは無くなりつつあるという印象です。
中国政府は不退転の決意で日本を徹底的に叩こうとおもってきていることは間違いないようです。韓国との関係はもうすこし複雑なので、同列には論じられませんが、中国政府はルビコン川を渡ったな、というのが印象でした。
小泉首相の靖国神社参拝を理由にしてますが、それでは次の首相が参拝を止めて、関係が劇的に改善されるとは、日本人の誰もが思わなくなってきたことですね。そのようなことを、多くの日本人は今年しらずしらずのうちに学んだのではないでしょうか。特に若い世代を中心に。劇的に良くなるとしたら、中国に日本が完全に屈服してひれ伏すような状態なのでしょうか。
中国側の読みがなにに基づくのかはよくわかりません。台湾を武力侵攻しても独立を妨げると、はっきり宣言しているのですから、日本が台湾寄りになったら、冗談でなく中国は日本を武力の対象にすると公に言い出すかもしれません。
ちょっと前なら、このような事をいえば笑い話に近かったのですが、今の日本人、特に若い人達を中心に本気に武力的な争いが、日中間で起きても不思議でないと思う人達が、増えているのでしょう。しかも、日中間で紛争がおきても、米国はなにも介入しないだろうという判断をする日本人が増えていることも事実です。仲裁くらいはしようとするでしょうが。
結局、日本人が今年学んだことは、中国も米国もあぶない、ということのはずです。米国が必ずしも、日本のことをそれほど考えてないことはニクソンショックというかつての経験もありますが、米国の指導的ジャーナリズムはどちらかというと親中であって、決して親日ではありません。
かたや、日本を攻撃の標的にしているし、もういっぽうも日中の紛争は武力レベルでも知らんぷりする可能性が高い、こういう状態に日本が置かれていることは、中学生レベルの思考でもすぐたどり着いてしまいます。
どうすればいいのでしょうか。日中以外の外国では、日中関係悪化について、日本が分が悪かったです。欧米のインテリと話せば、即座に日本は中国にたいして、謝り方が本気でない、中国の言うとおりだと、98%くらいに言われてしまいます。むかし、日本人はクジラを食べてけしからんと言われたときのように、四面楚歌的なので、わたくしはあきらめて、この件はあまり議論しないようにしています。議論しても無駄だからです。彼等は、たいした知識がないし、靖国神社がなんであるかもしらないし、そもそも日本がどのような宗教的バックボーンの国かも知らないし、どんなに話しても日本人の肩入れをする人達が増えてくるとは思えません。それに引き替え、中国ははるかに日中間の対立では圧倒的に正義と同情をかちえているのです。
しかし、日中間の対立はすでに世界的によく知られた事実になりました。しかも、日本国民のあいだで厳しい国論の分離がないことも認識されてきました。中国政府公認の激しい反日デモのおかげです。
理由はなんであれ、日本国民の多くが中国政府の言いぐさはあまりにも一方的であると感じだしてきているのです。日本は100%悪い、中国は100%正しい、たぶんこのような態度で中国側が日本に接してきていることに、この問題で日本人の多くがそれまでの中国善玉論同情論から離れてきて、日中間についてすくなくとも内省的になってきているのでしょう。
かつての中国の偉大な指導者毛沢東が言ったように、反面教師の存在は素晴らしい、日本人にとって、自分はすべて正しいという人間は大抵鼻つまみ者になっています。中国問題について、反面教師が中国政府になってきたのです。
われわれの国の政治的指導者、小泉首相が支持率がたかいのは、姿勢を低くしながらも、自らの信念を貫いているからでしょう。小泉首相が靖国神社に行くことについて国民の意見はおよそ半分ずつに分かれていますが、これも健全でしょう。わたくしも個人的には行くべきでないという意見です。でもこうなったら小泉首相は行かざるをえないし、政治的に行くべきなのでしょう。しかたがありません。
日中間は来年どうなるでしょう。
わかりません。ただ、中国政府の出方にかかってる部分が大きいように思います。中国政府の読みは時間の経過とともに明確になってくるでしょう。
ひとりひとりの日本人にとって、中国をどう考えるか、そして、米国との関係をどう考えるか、これが真剣な問題であることを、今年は強く感じたのではないでしょうか。