帰国すると前から協同研究していた東京のNTさんから、急いで論文にする必要がありそうな連絡ありました。昼過ぎに電話で相談。急いで原稿を読むようにする。夕方までに読んで、そのあと電話で長話。研究室の何人かとは、学術振興会応募の件でちょっと話し合い。この数日間の不在でも、新データ持ってきたのが4人もいるのは立派。N君の結果はたいへん面白いが、次になにをやるべきか、その実験がすぐ指示できないのが残念。あと1人の院生のデスクの上に明らかな新データが置いてある。前回の結果が再現できたようだ。彼とも夜になって議論。来週月曜講演するNigg博士のスケジュールの打ち合わせなど。MTさんに朝一番のディスカッションはお願いした。週末は夫妻を家に泊めるので、いくつかアレンジも必要です。今回は時差ぼけになるほどもいなかったし、帰国後の1日としては普通。きょうが普通でなかったのは、早朝からお昼近くまで別途やっておかねばならない野外肉体労働があったこと。たぶん、今日の夜もよく眠れるでしょう。
アメリカでもそうだったが、帰国しても中国での反日運動をどう受け止めるかが、大きな関心の持たれる話題になる。政治の話は、なるべくやめておこうと思うのだが、でも日記的なものなので、いちばん話題になったときに、どんな事をわたくしが言ったかを書き留めておくのも無駄ではあるまい。
Q:どうかんがえるか。
根本的には、隣人というか、しかもおたがい引っ越しできない隣家同士の関係とかんがえてます。しかも隣家のほうがはるかに家歴も古いし、かつては帝国のような大家だった歴史がある。
Q:なぜあんなに怒っているのか。
怒ったふりをしてるのではなく、確かに非常に怒ってるのでしょう。その原因は色々あることは確かで、どれか一つというものでもない。しかし、きっかけの一つに安保理の常任理事国になろうとしてる、しかも隣家にろくろく挨拶もしてない、このあたりが一つであることは間違いないでしょう。それから、怒りはポジティブフィードバックになりがちで、抑制するものがなければますます燃え広がるのが、中国における反日デモなのでしょう。今回は、官民一体ですね。信じられないようなことを、中国政府はやりますね。デモ隊の帰りのバスを準備するなんて。
Q:日本人としてはどう感じるのが普通なのか。
そんなもの、一人ずつ違うし、政治的意見くらいはみな自由にもてばいいのでしょう。でも、おおくのかたはあっけにとられて、もういい加減にしてくれ、こんな感じでしょうね。
わたくしは、今回デモ隊が「日本人を殺せ」と言い出してることに重大な関心を持ってます。これは決して看過してはいけないと思います。なぜ彼等はそういいだしたのか、いま中国ではいろいろな反日教育とか日本軍隊の残虐行為に対する復讐行為としていろいろな恐ろしいようなゲームが流行ってるとかも聞いてます。復讐として「日本人を殺せ」と平気でいいだす中国の若者が増えてるという事実からみて中日関係は2005年にある閾値を超えたのではないかと思い出してます。日本側がぼんやりしてるうちに、海の向こうの隣家では怒りの炎が燃えさかってとうとう理性的とは思えないところまで来てるのです。わたくしは、この件については、日本側の責任よりは、ほとんど中国側の憎しみ自己教育に起因すると思いたいです。
物理の法則のように、ものが何かに当たれば当然反発力は出ますね。スポンジのように力を吸収すれば別ですが、今回は中国首相や外務省の声明によってスポンジ的な要素を日本の民のレベルから失わせてしまいましたね。日本国内は静かなようでも、中国政府とデモ隊中国人に対して、激しい反発が起きてること、間違いありません。中国のこの激しい感情のうねりの噴出は、台湾に対する法律が同じ年に作られた事も偶然ではないでしょう。韓国でも、北朝鮮に対する親近感は増しこそすれ、日本に対する親近感は竹島問題でまたマスコミ的には急速に下落したようです。中国と朝鮮半島は歴史的に非常に近いことが今回でもはっきりしてます。でもこちらの隣人のほうは割合熱しやすく冷めやすいので、日本がしばらく相手を怒らせなければ、冷静になって頂けるとおもいます。
Q:どうしたたら、怒らせないようにできるのか?
小泉首相は靖国参拝を断念したほうがいいとおもってます。ここまで隣家が反対してるのだから、仕方ないです。内政干渉だから「断固毅然と参拝」するのでなく、ここまで隣家達が嫌がってるのだから、とりあえず首相、大臣はその間は参拝しないというのは、「我慢の友好」ではないですか。国家元首に相当する天皇が参拝されないのですから、首相がしなくてもなんら問題ないと思います。
それから、竹島問題ですが、韓国が実効支配してるのは事実なので、教科書には実効支配の事実を書いてもいいでしょう。しかし日本は日本の領土だと主張し、韓国と協議しようとしてるとかけばいいでしょう。それでも韓国が怒るのなら、しかたないです、怒らせておけばいいでしょう。どっちみちかの国が実効支配してるのですから。漁業問題があるのですが、そのあたりは、政治的な解決は十分に可能なはずです。一方で、尖閣諸島ですが、これはもしも中国軍隊が実効支配しようとして、軍事力を行使しようときたら、自衛隊が対応し、流血も覚悟でいないと、ある時突然持って行かれる可能性があります。中国政府と小泉首相との関係はわれわれが思う以上に悪いと思うべきで、彼に対する度胸試しに何かしかけてくる可能性が領土問題ではあるような気がします。フォークランド紛争は他人事ではありません。そんなことが起きたら、米国はたぶん手を出さないでしょう。
あと南京大虐殺問題ですが、これがあったかなったかよりも、日本側がなかったと主張すればするほど、相手が怒るというこのことをしっかり理解しなければならないとおもいます。わたくしは、南京大虐殺はなかったとしても、日本軍隊は無辜の中国人民を多数殺戮したことは事実なので、あってもなくても日本軍隊の犯した罪がすこしも変わらない、と思うのです。むしろ、中国人は数え切れないほどの日本軍隊の罪を、南京虐殺に集約して日本人に理解させようとしてると思った方が、相手の真意を理解できるとおもわれます。ですから、ここは日本人はあったかなかった、日本人が調査して調べるという態度は残念ながら持たない方がいいでしょう。隣人である相手がますます怒るだけなのです。
Q:日本はこれからどうしたらいいか。
どうしたらいいのでしょうね。よくわかりません。
小泉純一郎首相は「さむらい的心境」であると、思い
たいので、いまだ安保理常任理事国に立候補してないと思われますが、有力2隣国が強硬に反対することが明らかなになった時点でキッパリと立候補しないことを明らかにしてくれることを願うばかりです。隣国関係についての国家百年の大計のためです。これは決して、弱気でもなければ、妥協的でもありません。世界政治では米国の傀儡と思われている日本がどんなに商人国家として成功しても、世界の見る目は決して温かくないとおもいます。そういう場合には辞退するのが、名誉ある撤退として尊敬を勝ち得ると思います。たいていの国家は理事国にはならないのですから。隣家に大反対されたから、という理由は世界中によくわかるし、それで辞退すれば、日本の隣国に対する大きな信義の持ち方を理解してくれるはずです。
それよりも、米国との関係、特に軍事面での関係を何とかしなければいけないとおもいます。非核といってもそれは自分の思うとおりになる核は無いけれども背後には米軍の核がちゃんとあるというのが、隣国が日本を見る目でしょう。核に限らず、すべてのレベルで国の成り立ちのレベルで、日本は米国(米軍)があたかも存在してないようなふりをしてますが、隣国からはそうはまったく見えないということですね。そこのところでの「商人国家的偽善性」を減らさないと隣国(に限りませんが)との関係はうまくいかない、駄目というのがわたくしの長年変わらぬ意見なのですが。でも、この先にある議論はきょうはやめておきます。