わたくしは、京大特任教授といっても研究遂行面ではそのような役割を果たしていますが、教育にかんしては閉門状況なので、外部での学生の講義などは、刀が錆びない程度にはやりたいものです。さいわい、今年はこれからも奈良先端での客員教授としての大学院講義や、名古屋大学の大学院生達の招待での講義などがありましてそれなりに教育もやらしてもらっていますか。
若い学生さんの表情など見ながら講義をするのはそれなりに刺激があるものです。
来月は、台湾、再来月はニューヨークとワシントンに行って講演しますので、そろそろ旅準備も具体的に必要な時期になってきました。米国で学生さんがわたくしどもの昔の論文などを読み込んでいて、鋭い質問をしてきます。そう言うときには研究者稼業でのいちばんの楽しみです。つまり、これだけ年の離れた若い研究者に昔の論文が読まれて、質問が出て、それに直接答える楽しみです。
きょうは、夕方からある学術会議の会議に出るために、昼を過ぎてからラボを出ました。月曜なので、朝からそれまで結構忙しくいろいろ用を済ませてからです。イノベーション推進検討委員会なるもので、委員のみなさんが何を言うのかそれらを聞くのがとりあえずの興味です。
研究室に届いた通知で、12月の分子生物学会の会合で、組織が衣替えして、あたらしい組織になるようです。いろいろな議題の中に、研究不正問題を扱う委員会設立の件がありました。ぜひやるべきことなので、ありがたいことです。
わたくしもいまは音無しですが、杉野教授の事件では、海外を中心にいろいろな情報が入っています。
学会の調査は時間をかけても綿密にやるべきです。しかし、なかなか真相はつかみきれないかもしれません。科学研究と同じで、真実はそう簡単に姿を全部は見せないでしょう。しかし、調査をきちんとしないと、このような出来事は際限なく再発するでしょう。日本にはこのような問題が起きる温床がかなり前からあるのです。微温的な処理をすると禍根が残ります。なんといっても研究室主宰者の責任は重大です。
ここまでは、今日の会議の前に書いたのですが、イノベーションの会議はなかなか興味深いものでした。つまり政府筋の要望があったとのことでしょう。担当大臣もあいさつにわざわざ来られました。会議は公開で、マスコミの方も相当もいました。会員と連携会員全員から意見を募る百家争鳴方式とこの委員会がコマンドするヘッドクオーター方式があるのでしょうが、どうもとりあえずは百家争鳴的にやってアンケートの様子を見るのだと、わたくしなりに理解しました。それも一つのやりかたなのかもしれません。わたくし自身は、イノベーションの担い手の国民自体が積極的になれる方向付けが非常に重要といったつもりですが、どうもそのあたりは、この会議の趣旨からは、ずれていたようでした。あまり理念をいってもはじまらない、というようなコンセンサスがこの委員会の設立過程にあったのかもしれません。20年先の社会をかんがえつつのイノベーションですから、なまじの占いよりはずっと難しいでしょう。