理論と実践ー安倍首相の施政演説

安倍首相の風貌をみていますと、やはり毛並みのいいかたなのだなあ、と誰でもかんじるでしょう。わたくしももちろんそう思っています。
父親はなれなかったとしても首相候補であったことは間違いないし、岸信介元首相は祖父だし、佐藤栄作元首相も縁戚(たぶん大叔父ですか)なのですから、総理大臣になるのは約束とまでは言えなくとも、高い確率だったことはまちがいありません。

小泉前首相は、安倍氏をいつも前面にだして後継者的な扱いをしたので、首相になるための心構えと準備をこのかたくらい長期かつ、きちんとやった人はなかなかこれまでの首相ではいなかったと思います。たなぼたなんて言われた首相もいましたし。

そういう点でみると、きのうの安倍首相の施政方針演説は、間違いなく、時間を無駄にせず、よく準備したものとおもいます。美しい国日本、教育再生、憲法改正、再チャレンジ、イノベーション25など、どれもこれまでの首相がだれも言ってなかったことです。本来は新味が非常にあるはずです。

ところが、政治が魔物だとおもうのは、これらがいまや非常に新味があるように聞こえないのですね。なぜだか分からないのですが、もう聞いたことがあるような気がしている国民がおおいのでしょう。なぜでしょうか。
昨年秋から、安倍首相が発信してきたこれらの内容が、安倍首相でなくだれか別のそれこそ演説のゴーストライターが書いたかのような印象を与えているのです。おかしなことですが、安倍首相の独自の路線のように聞こえてこないのです。

これは、たぶん安倍首相にとってかなりの計算違いではないでしょうか。
理論的には、安倍首相は着々と準備したものを表にだして、政治的実現を図ろうとしているのだし、これらを政策目標にはっきり掲げた首相はかつていなかったのですから、拍手喝采とまではいかなくとも良い政策目標だし、大いに実現して欲しい、こうくるはずでした。
なにか齟齬があるのです。安倍内閣の支持率が、就任以来ずっと低下してきているのに、それを止められない。理論としては順調なのに、実践はあきらかに不調だということです。

独自な政策が独自な政策として選挙民にうけとめられない。下世話にいえば、政策が高尚すぎてるのかもしれません。目の前にある困難を直ちに解決してほしい、国民はそう思っているのかもしれません。

美しい国になる以前に、いまの社会では大変な不平等が進行しだしているのではないか、米、中、韓との関係が年々歳々悪くなっているのではないか、団塊の世代の年金は大丈夫なのか、逆にこの団塊の世代の年金をはらうことがこの国の破綻をひきおこすのではないか、などなど困りそうな問題が山積しているのだから、美しい国も、憲法改正も、子供の教育も前面にださずに、すこし後回しにしてもらって、緊急のところでなにか一つこれという成功を見せて欲しい。
選挙民はそんな風に考えているのではないでしょうか。選挙民は余裕があったもいいはずなのに、余裕がないのでしょうか。

ですから、安倍政権としては北朝鮮拉致問題か何かで強烈にインパクトのある業績をあげたいとそのうち思いだすはずです。一見緊急に見える他の問題はすべて根が深いからでっす。
安倍政権の人気の沈下については、もうひとつ安倍首相を支える人々が、どうも水と油というか、違和感がつよいコントラストを示しているのですね。特に防衛大臣などは、なんだかとても変だし、まったく合わない人種が混じっている感じです。
それとも、安倍首相も実は、事務所を雀荘か何かにしてしまう人物とどこかで一脈相通ずるのでしょうか。それから、官房長官が首相をよく補佐しているように見えないもの辛いところですね。
幸い、小沢民主党がまったく冴えないので、まだまだ命脈は保つでしょうが、でも安倍内閣の空洞化は毎日進行しているとみています。
やはり、理論と実践がマッチしないと、どうにもなりません。

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