捏造問題と税金による雇用 Scientific fraud etc

いま那覇から伊丹空港への便の機中で書いてます。わたくしはかなり勤勉なほうで機中でも大抵は働いてるのですが、きょうはかなり揺れる予定とかでおとなしくしてます。ところで昼時にいった海の駅で、もずくを3キロも買ったので笑われました。塩漬けは1年はもつというのを前回の時の浜比嘉ホテルで聞いて買ったら、おいしかったのでまた買ったのです。
今週のK大研究室のゼミの後で、ラボメンバーにフェアーなデータの提示、問題ありの提示、どういうものが捏造となるのかについて実例を挙げて話しをしました。若い人は、実例を沢山知って、何は許され、何は許されないのか、何が問題として批判され、何が捏造として断罪されるのか、知らねばならない。人ごとと思ってはいけない。この問題にあまりに無知だと将来本当に困ることになります。それから、セクハラでも明らかなようにこのような問題は先進国(米国、英国ですね)で決まったスタンダードがおおむね適用されることも常識として知っておく必要があるのです。
例として挙げたのは、免疫ブロットでバンドを示すときに、そのバンド部分だけを示して上下を示さないケースが多いですね。多くの場合は省スペースもしくは上下にコンタミなどの余計なバンドがあるからなのですが、上下部分は提示を求められたら、見せる必要がありますから、データは取っておく必要があります。そして上下に余計に見えるバンドは確かにコンタミで提示するバンドが確かに本物であることを証明する一連のデータがあることが必要です。しかし中にはそういうセットのデータを持たずに、狭い範囲のバンドのみを切り出して見せてるのではないか、大丈夫かなと思うことがよくあります。一方で、狭い範囲しか示してないのに、実際に全体を見せてもらうと実に見事にスカッとしたシングルバンドしかなかったりすると、なんと奥ゆかしいと感心します。
ところが、もしも余計なバンドをフォトショップで消したりすれば、これは間違いなくデータ捏造の一つとなります。こういう修飾は見る人が見ればすぐ分かるので、論文投稿後もしくは発表後に発見されたら、研究者生命を失うかもしれない違反行為とみなされます。たとえ他はすべて潔白でも一つでもそういうデータを出せば、誰もその論文の内容を信じてくれないでしょう。そして著者の名前と所属は長期にわたって憶えられてしまうでしょう、
グラフを作るときに、一つ定量データがグラフがかけ離れていたとします。実験を繰り返してやれば、そういう問題は通常起こらないのですが、仮にあったとします。このデータを意図的にグラフから削れば捏造ではありませんが、問題行為です。やるべきではありません。もしもデータを勝手に付け加えてグラフをもっともらしくすれば、これはデータの捏造です。
このあたりはそれでもまだ重度の捏造ではありません。今回の阪大医、生命機能での捏造事件に比べれば微小な程度の捏造かもしれません、。しかし、そういう相対的に軽度のものでも一つでもやり出すと、後次々と行為はエスカレートするのです。過去の捏造のケースは大抵がそういう軽度のものからスタートしてます。それに、もっと大切な事はそのようなデータの意図的選択、改変や捏造こそが真実をねじまげる行為なのです。科学者でありつづけるためには、絶対にやってはいけない事なのです。
それでは、困ったデータはどうすればいいのか、やはり知恵がいります。しかし前提として実験を繰り返すのを当然という気持ちが大切です。焦りは禁物です。そのうえで、困ったデータは論文に出すのには熟してないと思うべきです。そのデータが無ければ、論文が書けないのなら論文は書かないか、もしくは繰り返してデータを出すか、どちらかです。また一方で正直に理由を書けば怖がることはまったくないケースが沢山あります。データのなかで一見困るような部分も、説明をしてそのまま提示すれば良い場合が多いのです。正直に勝る対策はありません。場合によっては、貴方が困った一見おかしなデータが、熟達したレフェリーが見れば非常に面白い可能性や、一方で貴方のやっている実験手技に大きな欠陥や問題があることを発見してくれるかもしれません。ですから、勇気ある正直さが往々にして成功と勝利をもたらすのです。また負けるが勝ち、その場で涙をのんで出さなかった魅力あるデータが実は完全な勘違いであることはよくあります。競争相手が似た結論や似たデータを出してるときに起きがちな事です。今日は機中なので長くなりました。

さて昨日書いたことに対して、ちょっと気になるコメントがありました。
「税金で雇用を生み出しても仕方ないですよ。」
「年金についてはどうお考えですか?」
前段ですが、日本の基礎研究はほとんど税金でまかなわれています(残念ではありますが)。ですから、わたくしが関わる研究分野を発展させようとおもうと、税金で雇用を生みだす以外に現実的には方法がないのです。仕方ないですよ、といわれても雇用の増大、これが新しい分野での基礎研究を発展させるほぼ唯一の方法なのです。一方で、沖縄のような場所では将来性のある職業分野での雇用の増大はたとえそれが税金であろうと非常に意義があるとわたくしは信じてます。
次の段の意味はわたくしには何をいいたいのか、わかりません。
「追記」帰宅して朝日新聞の夕刊を読んだらなかに消えたマウスの謎というキャプションで阪大の捏造問題の記事があった。一読何を報じたいのか不明なトーンに戸惑う。別に誤りがある記事ではないが、下村、竹田両教授の責任を追及をする姿勢のまったくない記事は結局誰を利するのだろうか。特に記事の後段の経過を説明する部分の記事の意図はまったく不明。この出来事が前代未聞という意識はこの記者さん達にあるのかそれも不明。

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