神戸の学会では二日間ほど研究者の雑踏の中、大勢の分子生物学をする人たちの中で呼吸をするというか、時を過ごしました。そこで、何かが感じられました。
目に見えない緊張感のようなものが人々を包んでいるような感覚でした。つまり研究が楽しい、屈託なく学会を楽しむ、というよりは不安と緊張が強いのではないか、という感覚です。しかし、これはわたくしの思い過ごしの可能性も高いです。
最初の日の夜にあった、若手倫理を考える会にあった、不定形のはっきりしない緊張感が残存したせいかもしれません。
物理や化学のようにノーベル賞受賞者もでてこないし、生命科学系は苦境の時なのかもしれません。
わたくしのような年寄りの人間の元気さはやはりカラ元気か、勘違いの元気さなのかもしれません。
しかし、日本の世の中を見渡せば、緊張感の強い時代なのだと思わざるをえません。
家族の一人がリストラにあえば、周辺のすくなくとも十人くらいの人たちが暗い気持ちになるし、今後のことを考えて心配の種が尽きなくなります。波及効果が大きい自動車や電気産業でも直接の雇用打ち切りが十万のオーダーででているのです。わたくしの住む周辺のガソリンスタンドかなり閉店に追い込まれています。値段が激しく動くと倒産する時代のようです。
陛下の消化器系統のご病気は皇統の存続についてのストレスも一因だと宮内庁長官が言っていました。本当にそうだと思います。わたくしのような下々の人間にとってもたいへん心配です。
北朝鮮との関係を媒介にして、日本人の米国にたいする感情はかなり悪化してきたようです。北朝鮮を「ならずもの国家」といったはずの同じ米国大統領が核を持ったがゆえにたったそれだけの理由でまるで態度がコロッと変わって、北朝鮮の顔色を窺うような交渉しか出来なくなるというのはちょっとひどすぎます。日本の安全保障についての深い不安が湧いてくるのは当然でしょう。米国まかせに絶対出来ない、この感覚は国防に関心を持つ日本人の多数の意見になったでしょうか。オバマ大統領になったらもっと悪化するかもしれません。しかし、それでどうするのかここで不安と緊張が高まります。
外交で日本人の拉致問題について一切何も成果がでないのであれば、自衛隊のコマンド(ないんでしょうが)でも使って超法規的に一人でも二人でも救い出せないのかとおもう日本人が増えてまったくおかしくありません。
そういうときに自衛隊元幕僚長が日本がいい国だといったらクビになったと、核をもたねば軍事的独立は出来ないとまで言い出す国情になってしまった、これでは自衛隊はいったいどうなっているのかと、一般国民に不安と緊張を引き起こしています。こういう威勢のいい意見を好きな国民ももちろん一方で多いでしょうから、具体的な国防問題で国論が激しく分裂する素地が出来てきたとおもいます。核を持つか持たないか、タブーであっていいはずがありません。自力で持たねばなんの意味も無いのですから、日本にとって大変な難題です。
しかし、今の日本の国内の最大の不安要因はなんといっても経済は大丈夫なのか、それを支持しスムースに進行させる政治は大丈夫なのか、この点での直近の将来への不安と緊張がいちばん大きいのだとおもいます。現首相、民主党代表もの足りない、いったい代わりに誰かいるのか、そういう大きな不安もあるでしょう。
色んな意味で日本は未知の状況に入りつつあるのでしょう。2009年日本の曲がり角になりそうです。
